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【突撃!雑誌制作の世界】#1 講談社『ViVi』編集部

ViVi 講談社 早稲田
国内の女性向けファッション誌の中で最大規模の発行部数を誇る『ViVi』。創刊から41年、ファッションや美容などの幅広い分野でトレンドを提供し、専属モデルの華やかな姿は常に読者の憧れであり続けてきた。しかし、その制作の裏側は意外と知られていない。そこで今回は雑誌制作におけるこだわりや『ViVi』に込める思いを副編集長の木村冴里さんに伺った。
副編集長の木村冴里さん

「自分らしく」を大切に

 

ーーまず、雑誌のコンセプトについてお聞かせください。

『ViVi』は昔から「自分らしく」がテーマなので、コンセプトは「自分のためのファッション」かなと思っています。他人目線の「モテ」ではなくて、自分が自分のために好きな格好をするところに重きを置いています。

 

ーー読者層はどのように想定していますか?

トレンドを知りたい子だけじゃなくて、ファッションに迷ってる子にも読んでほしいです。自分の方向性を見つけてもらえたらいいなと思ってて。「こういうファッションもあるんだ」とか「こういうメイクもあるんだ」とかも含めて選択肢を広げられるといいなと思っています。

 

編集者の勘、そして「0.5歩先を行け」

 

ーー『ViVi』はどのようなプロセスで作られるのですか?

まずプラン会議で企画を出しあい、編集長とデスクで内容を決めます。次に担当者を割り振って、撮影して。その後はページの構成を担当者が作って、それをデスクがチェックします。

チェックの後にもう1回直してもらったりして、色校を出して校了するっていうのが、1ヶ月の流れになります。今(9月)の時点で、12月まで内容は決まっているので、3ヶ月ぐらい早いんですよね。もう秋終わっちゃってる(笑)。

 

ーーそうなんですね(笑)。
では、企画や取材相手はどのように決めているのですか?

ファッションの企画に関していうと、いろんなブランドがやってる展示会やコレクションで洋服を見て、「『ViVi』の読者の子たちだったら、こういうのが好きそうだね」と決めています。取材相手に関しては、今をときめく人を選んでいます。ViViでは昔から「0.5歩先を行け」と言われています。一歩だと行きすぎだし、リアルタイムだともう遅いんです。

流行りそうな人を見つけるときには、たとえばSNSでフォロワー数が増え始めているとか、投稿が面白いとか、なぜか気になるとか、そういう基準で見つけています。

 

ーーファッションや美容、芸能などの流行はどのように取り入れているのですか?

たとえば、展示会に行ったときに、どのブランドも赤い洋服ばっかりが出ていた場合、「赤い洋服流行るよね」っていうのはわかるじゃないですか。それとは別に、「このブランドにあるこれがめちゃくちゃ可愛い、これ『ViVi』の読者の子は好きだと思う!」みたいな感覚で流行らせるパターンもありますね。「絶対これ流行ると思うんですよね」みたいな嗅覚も大事にしてるから、勘の部分も大きいですね。自分の中のデータに基づいているのかもしれないです。

 

ViViなりの解釈で魅力を引き出す

 

――取材の準備で意識していることはありますか?

その人について調べるのはもちろんですけど、どちらかというと読者調査に力を入れていますね。たとえば、ファンはこの人のビジュアルが見たいんだろうなってときは、写真を多めにします。内面を見せたほうがいいなってときは、インタビューを分厚くします。

ただの取材って誰にでもできて、それだと『ViVi』である意味がなくなってしまう。『ViVi』なりの解釈でその人の魅力を引き出すことを意識していますね。

 

――取材の際に相手の話を引き出せるよう工夫していることはありますか?

私の場合は、堅苦しいのが嫌なのでフランクに話してます。もちろんベースにはリスペクトの気持ちがあって、失礼がないようにするのは当たり前ですけど。

あとは、相手が求めていることがこちらと合致しているのかとか、「この人はここまで話しても良さそうだな」「壁あるな」とかを感じ取って取材していますね。取材相手に合わせて色々と変えます。

 

――撮影でモデルの魅力を引き出すために意識していることはありますか?

撮影の現場に限った話ではないんですが、コミュニケーションは大切にしています。たとえば、コミュニケーションの中で得たことを持ち帰って、私服に力を入れてるモデルの子で私服企画を組んでみたりします。「この企画をやればこのモデルはもっと人気出るんじゃないかな?」とかは考えますね。

嬉しいことに、キャラがついたと感謝してくれるモデルの子も多いんです。もう卒業しちゃったんですけど、古畑星夏(注ⅰ)は私服企画を組んだら好評で、それがきっかけでファンがついたんです。本人がやってるYouTubeでもそういう動画が人気になったりっていうのがあって。

やっぱり彼女たちは専属でいてくれているので、その子たちなりの色を作ってあげるのも我々の仕事の一つなのかなって思っていますね。

(注i)古畑星夏:元ViVi専属モデル(2017年9月~2023年12月)

 

――誌面のデザインで気をつけていることはありますか。

読者がいることを忘れてはいけないと思うので、読みやすさを大事にしています。どの書体を使うか、色をどうするかなどは、編集部員に任せています。みんな、いろんなものを見ていて、いろんな感度でやっていますから。

私がファッションのデスクになってからは、情報を詰め込むように心掛けています。今はトレンドが知りたくて雑誌を買うというよりは、タレント目的で買う人が多いと思うんです。タレント目的で初めて雑誌を買った人が読んだときに内容がスカスカだったら、次『ViVi』は選ばれないと思っていて。反対に、初めて買った雑誌に情報が詰まっていたら、「わかりやすい!」「これが流行っているんだ」「この服可愛いな」みたいに思ってくれるはずなので、情報を多く入れるようにしてますね。

 

――内容面に関して気をつけていることはありますか。

硬くなりすぎないようにはしています。あと、みんな言葉を貪欲に作ろうとしていますね。

たとえば、「ニュートラルギャルズ」という企画。ギャルの中でニュートラルカラーが流行りそうだというときに、大人っぽくて可愛いから「ニュートラルギャルズ」みたいな言い方にしました。でも、ニュートラルカラーって無彩色のことで、本来の意味とは微妙に違っていて。だけど「ニュートラルギャルズって分かりやすいな……」って思ったときは、「もうそのままいっちゃおう!」ってなります。もちろん校閲からは修正指示が入るんですけど、言葉を作るのも編集者の仕事だなと思います。ちなみに「国宝級イケメン」はViViが作った言葉です!

 

ViVi編集部の様子

ネット社会の現代。ViViの未来は……

 

――現在力を入れていることは何ですか。

今はSNSかな。今と昔では、SNSへの向き合い方が違いますよね。TikTokの影響で15秒で情報を得ることにみんなが慣れてしまった。見るものが多くて今の子は時間がないでしょう? 私たちの世代から見ていると、しんどいだろうなと思うんですよ。だから、確かに15秒で情報を完結させてほしいだろうなと思って。

個人的には、雑誌を作るというよりはコンテンツを作っていると思っています。コンテンツをどのようにアプローチするかを考えているから、紙とかインスタとかの媒体ごとに見せ方を考えることに力を入れているのかなと。

 

――雑誌の将来について考えていることを教えてください。

紙の媒体がなくなることはないと思います。だけど、展開は様々になっていくと思う。読者が『ViVi』っていうブランドの中でどの媒体を使うか選択できるようになるのかなって思いますね。

紙でないとできない展開ってあるんですよ。今はみんなネット社会で生きているので、カタチとして残る紙媒体が嬉しいらしくて需要があるんだなって感じます。Webの影響で流行の周期が徐々に短くなっているから、いつかまた「紙がいいよね」って時代もくると思います。

今の子たちは有象無象の情報を自分の基準でなんとなく見ているじゃないですか。「タレント目的で雑誌を買ったけど、情報がまとまっていてわかりやすい」っていうコメントを見たときに、なるほどと思いました。タダで情報をたくさん見ても、頭の中で一生懸命まとめないといけない。そこはお金を払って、整理された情報=雑誌を読む意味があるのかなと思います。

 

ーー『ViVi』を読んだ人にどんな気持ちの変化を与えたいですか?

読んで元気になってほしいですよね。あと自分は間違ってないと思ってほしい。たとえば、「このタレントが好きなのは間違いじゃなかったんだ」とか「こういう格好してて間違ってなかったんだ」とか。自分を否定しないでほしいとすごく思います。あとは……雑誌買ってよかったって思ってほしいかな(笑)。参考になったな、面白かったなって思ってくれたら嬉しいですね。

 

「好きなことやっといたほうがいいよ!」

 

ーーありがとうございます。最後に大学生に向けてメッセージを頂ければと思います。

大学生はほんとに好きなことやっといたほうがいいと思う! 私は死ぬほど遊びましたね。あ、でも犯罪はだめですよ(笑)。

学生時代に「私このままどこに就職しよう……」って思ってたんですよ。そもそも法曹の道(注ⅱ)に進のは無理だと思った。銀行とかも向いてないと思ったんですよ。「モノがないもの」を売るのは難しいなって。でも、どうしても就職しなきゃいけないかもしれない。だったら最後に好きなことしたいなって思って、出版社でアルバイトを始めたらすごく楽しかったんです。

(注ii)木村副編集長は早稲田大学法学部出身

 

ーーその経験は今の仕事に活きていますか?

うん、活きてると思います。具体的にこれに活きてるっていうのはわからないけど、物怖じしなくなったなと思います。結構海外旅行してたのでやっぱり変な目に遭うこともあったんですよ。フランスに行ったときに空港で荷物が出てこなかったことがあって。大して英語も喋れないのに「どこにあるんだ!」とかギャーギャー言ってたんです(笑)。でも結局出てこなくて、じゃあもういいや、保険下りるしって思っていろいろ買い物しましたね。最終的には知り合いのおかげで荷物も戻ってきたし。結果オーライでした。

基本、そういう感じで生きてきました。本当になんとでもなるから、人生なんて。私にとってその表現の場のひとつがファッションなんです。「なに着ててもいいよ。気にしなくていいよ、周りの人のことなんて」ってすごく思います。楽しけりゃいいよ、人を傷つけてなければ。とはいえTPOも大事ですけどね(笑)。

時間は有限だけど、大学生の時間って無限じゃないですか? だからほんとに好きなことをやっておいたほうがいい! それをやれるのが大学生なんだと思います!

 

『ワセキチ』を読んでくださいました!

 

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