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あなたの思い出がある場所 国際子ども図書館インタビュー

国際子ども図書館
上野駅公園口から徒歩10分、横断歩道を渡ってまっすぐ進むと立派な建物が見えてくる。ルネサンス様式のレンガ棟と、ガラスに覆われたアーチ棟で構成された「国立国会図書館国際子ども図書館」。国内外の児童書を専門に扱い、館内にはたくさんの懐かしい絵本や児童書が並んでいる。児童書専門図書館としてどのような取り組みを行っているのか、企画協力課の中島美奈さんと中村邦子さんにお話を伺った。

📚記事本編

「国際子ども図書館の成り立ち」

——国際子ども図書館の成り立ちについてお伺いしたいです。
1906年に帝国図書館として建てられたものを再利用して使っています。当時は西洋に追いつけ追い越せという時代だったので、東洋一の図書館を建てるという壮大な計画のもとに設計されました。そして、戦前は帝国図書館、戦後は国立国会図書館の支部図書館として運営されてきました。1990年代には子どもの読書離れや国語力の低下が問題となり、国立の児童書専門図書館を建てようという気運が高まりました。そこで、帝国図書館の建物をリノベーションして、2000年のこどもの日に部分開館、2002年に全面開館いたしました。

——「子どもの本は世界をつなぎ、未来を拓く!」という理念の実現のために、大人に対しても何か取り組まれていることはありますか。
この図書館はアクセスしにくい場所にありますので、全ての子どもにこの場所に来ていただくというのは到底無理な話なんですね。ただ、全国にいらっしゃる子どもに本を届ける方や、子どもと本をつなぐ方への支援ができれば、国内の子どもたちの支援にもつながるということで、そういった方向けに研修や支援を行っております。具体的には、児童文学に関する知識などについてオンラインで収録した「児童文学連続講座というものを全国どこからでも見ていただけるような研修などがあります。

「大人も子どもも楽しめる空間」

——「子どものへや」はどのようなお部屋ですか。
主に小学生以下を対象とした本が1万冊くらい並んでいます。丸い書架の内側には絵本や児童文学、外側には図鑑などの子ども向けの知識の本が並んでいます。子どもの目線に合わせて棚を低くしたり表紙が見えるように置いたりして、興味を持ってもらいやすいようにしています。それから、季節に合わせたテーマの小展示も行っていて、絵本や読み物、海外の本をなるべくバランスよく取り入れるようにしています。たとえば「雨」がテーマの場合は、雨降りの日の絵本や雨が降る仕組みを解説するような知識の本を並べて、子どもの興味を広げるような配置をしています。また、光天井」といって、天井全体が照明になっています。光がどこからでも当たるので、どんな場所、格好で読んでも目が悪くなりにくいようなお部屋になっています。

国際子ども図書館 子どもの部屋
子どものへや

——「世界を知るへや」はどのようなお部屋ですか。
世界の国と地域の基本的なことや文化などを知ることができる本が、国や地域別に2千冊ほど並んでいます。またその国で使われている言語で書かれた本も置いてあります。言葉が分からなくても、絵を見れば何となく内容は分かりますし、ある国や地域について調べる必要があるときなどに気軽に見てもらえるようなお部屋になっています。テーマを決めて小展示を行っている部分もあります。

——そこではどのような展示をされているのでしょうか。
世界の文字を見比べることができる展示や、世界の数字の書き方がわかるような展示があります。文字や数字は子どもが最初に触れるものなんじゃないかと考えて、そういう展示を行っています。また、日本の本が海外で出版されたときにどんな違いがあるのかということで、絵が同じで文字だけ変わっているものや、絵自体が変わっているものなど、いろいろ見比べられる展示もあります。「国際」という名前がついている図書館ですので、海外の本にも興味を持ってもらいやすいように展示をしています。

国際子ども図書館 世界を知るへや
世界を知るへや

——「調べものの部屋」はどのようなお部屋ですか。
中高生の調べものの入り口になるような本が置いてあります。レポート作成に役立つ調べ方の本や「何々を知るには」みたいな本などが並んでいます。物語作品は教科書に載っているような古典的なものが多いですね。知識の入り口になるような本が並んでいるので、大人の方でも楽しんでいただける部屋かなと思います。 大人になっても純粋な好奇心は失われないと思いますので、いつでも本を読みに来て、本の楽しさや知の膨大さ、深みに触れてもらえるといいかなと思います

国際子ども図書館 調べ物の部屋
調べもののへや

——「児童書ギャラリー」はどのようなお部屋ですか。
明治時代から現代に至るまでの児童書の歴史をたどることができる常設展示のお部屋です。児童文学の棚と絵本の棚に分かれていて、奥に行くにつれて時代を下っていく感じになっています。その時代を代表するような本が「面出し」という表紙が見える展示の仕方になっています。「こんなふうに絵本の絵の印象が変わっていくんだな」とか「この時代は文字が右から左に書かれているんだな」ということを体感していただけると思います。気になった本を実際に読むことができますので、歴史をたどりつつ、気軽に深く楽しんでいただけるお部屋かなと思っています。

国際子ども図書館 児童書ギャラリー
児童書ギャラリー

──棟ごとに利用者の対象年齢が分かれているという印象を受けました。
結果的に今は対象年齢が分かれていますが、2000年に開館した当時はレンガ棟のみで、大人も子どもも同じ建物の中で過ごしていたんです。しかし、2015年にアーチ棟という建物ができました。その2階に18歳以上の研究者を主な対象とした「児童書研究資料室というお部屋があるのですが、入るのに手続きが必要なので利用のハードルが高くなっているんですね。結果的にレンガ棟は子どもたちが楽しんで本を読んだり、大人が昔の思い出に浸って児童書を読んだりするための建物になり、アーチ棟はじっくり静かに研究をする方向けの建物になったのではないかと思います。

——明治時代から使っている建物とのことですが、特にイチオシの造りは何でしょうか 。
レンガ棟の中心に位置する大階段のシャンデリアは、1906年の創立時から使い続けています。 大階段は20メートルほどの吹き抜けになっていて、見上げてもかっこいいし、見下ろしても素敵なのでおすすめです。改修前の大階段は全体的に隙間が多いデザインで、手すりの高さも今の建築基準に合っていませんでした。安全性と意匠の保存を折衷した結果、縦に面積の広いガラスの手すりをつけることで高さの安全基準をクリアして、デザインはガラス越しに見えるようになっています。大階段は写真も撮れますので、ぜひ撮ってみてください。

国際子ども図書館 大階段
大階段

——他にも保存と利用を両立するために工夫をされていることはありますか。
レンガ棟の3階にラウンジが新たにつくられました。帝国図書館の建物を保存し、再利用する上で、本来は外壁だった場所をガラスで覆ってカーテンウォールを設置しています。明治時代に作られた外壁を間近で見られるようにして、新たなスペースとしても活用できるようになりました。ただの保存や改修ではなく、新たな価値を付加する良いリノベーションができたのではないかと思います。

「楽しみ方は人それぞれ」

——国際子ども図書館を利用される方は、どのような目的で来館されることが多いですか。
一人ひとりに伺っているわけではないので個人的な印象にはなりますが、上野公園を訪れたついでにふらっと立ち寄られることが多いと感じます。普段あまり図書館を利用しない方が偶然足を運んでくださるというのも、当館ならではの魅力だと思います。また上野公園周辺は修学旅行先にも選ばれやすいため、校外学習などで訪れる中高生も多いですね。さらに、図書館関係者や児童書の研究をされている方、建築が好きで来館する方も多くいらっしゃいます。

——見学対応や取材対応をされる中で、よく受ける質問や関心が高い話題にはどのようなものがありますか。
一般の方からは建物に関する質問が多いですね。帝国図書館時代から使われている部分もあり、重厚な雰囲気の建物なので「この部分は明治時代から使っているんですよ」とお伝えすると、皆さんとても興味を持ってくださいます。また、書庫をご案内すると「本はいっぱいにならないのですか?」といった質問もよくいただきます。一方、図書館関係者の方からは展示のテーマの選び方についての質問や「今度、生徒を連れてきても大丈夫ですか?」といった教育利用に関する相談も寄せられています。

——小学生向けの見学では、子どもたちはどのようなことに関心を持っていると感じますか。
恒常的には行っていないのですが、夏休みに親子連れの方向けの図書館見学ツアーで小学生の方をご案内しました。印象的だったのは、子どもたちがとても素直に反応してくれたことです。たとえば明治時代から100年以上続く建物の構造を説明すると、その場では理解できているか不安になることもありました。ただ、見学の最後に「何が一番印象的だった?」と尋ねると「100年前からあるシャンデリアがきれいだった」と照れながら教えてくれる子もいました。そういう瞬間に出会うと、思わず「かわいい! 大好き!」と感じてしまいます。

「図書館の枠を越えたイベント」

——国際子ども図書館では様々なイベントが開催されていますが、具体的にはどのようなイベントがありますか。
毎週土曜日に4歳以上の子どもを対象とした「子どものためのおはなし会」で、読み聞かせや簡単な手遊びなどを実施しています。他には、生後6ヶ月以上3歳以下の子どもを対象とした「ちいさな子どものためのわらべうたと絵本の会」を月に1回行っています。また春には読み聞かせや大規模なイベント、秋には上野動物園とコラボレーションしたイベントを行っています。2025年は「蛇」がテーマで、上野動物園の飼育員の方に蛇の剥製や抜け殻の標本などを持ってきていただいて、蛇の生態を説明していただきました。それに合わせて国際子ども図書館では蛇に関するお話の読み聞かせをしました。

——それらのイベントを計画し、運営する上で工夫していることはありますか。
子どもたちの集中力が切れないように、途中参加はご遠慮いただいております。読み聞かせをする職員は絵本をよどみなく読めるように何回も練習をしています。 それに加えて、普段は本に触れないような子どもたちもお話の世界に入りやすく、打ち解けやすいように、最初にわらべ歌を歌ってから読み聞かせを始めるというふうに構成を工夫しています。

——他にはどのようなイベントを行っていますか。
いくつかありますが、特に上野公園という立地を生かして周辺機関との連携イベントを積極的に行っています。たとえば東京文化会館さんとのコラボレーションでは新進気鋭の演奏家に来ていただいて音楽会を開き、演奏後には演奏テーマに合わせた絵本の読み聞かせを行いました。また、音楽をテーマにした絵本を読んでいる後ろで生演奏する企画もあります。こうした他機関との協働によって、普段は本にあまり親しみのない大人の方やお子さんにも「このお話、聞いたことがあるな」と印象に残る体験を提供したいと考えています。

——「なぜ図書館で音楽会を?」と疑問に思う方もいるかと思います。新たな利用者を取り込む狙いもあるのでしょうか。
本に興味がないお子さんにも図書館に親しんでもらうきっかけになると考えています。やっぱりクラシックのコンサートなどは静かにしないといけないというイメージがあるじゃないですか。でも、国際子ども図書館では「少しざわついて大丈夫ですよ」「騒がしくなっても問題ありませんよ」とご案内した上で、0歳から入れる音楽会を開いています。そのため、保護者の方も気兼ねなく来場でき、こうした場があることを知っていただくこと自体が図書館との新しい接点にもなると感じています。

——広報として現在力を入れていることや、今後挑戦したい取り組みなどはありますか。
まずは、国際子ども図書館の存在をより多くの方に知っていただくことが大きな目標です。まだ認知度が高いとは言えないと感じていますので、ぜひ皆さんの周りの方にも紹介していただけたら嬉しいです。また広報の立場として、個人的にはSNSの発信にいっそう力を入れていきたいと考えています。昨年Instagramを開設してから、ちょうど1年が経ちました。今後はXとInstagramでどのようにトーンを変えていくか、より魅力的な写真を撮るにはどうすればよいか、といった点にも取り組んでいきたいと思っています。

取材風景
取材中の中島美奈さん(左)と中村邦子さん(右)
「読み返すたびに得る、再発見の楽しみ」

——お仕事をする中で感じる児童書の魅力についてお伺いしたいです。
大人向けの本よりもたくさんの世界が広がっていて、想像力を刺激されるのが児童書の魅力だと個人的には思います。大人だったらありえないと切り捨ててしまうような展開でも、児童書では登場人物がみんな真面目に向き合って、乗り越えていったり、時には逃げたりします。そういう世界が私は好きです。改めて読むと、子どもの頃はただ楽しんでいた物語がとても深いことを言っているなと感じたりしますね。大人になってから読む児童書の良さだと思います。

——お二人に伺います。昔読んだ本を大人になってから読んで印象が変わった経験として、思い出深いものはありますか。
子どもの時は、ただご飯が美味しそうだなと思っていた本が「このシーンではものすごくつらいことがあったんだな」と気がついたり、子どもの時は暗くて好きではなかった本が、実は孤独に寄り添ってくれていると感じたりすることがあります。次に読んだらまた異なる印象を受けるでしょうし、いつ読んでもその時々にわかる良さがあるのでしょうね。(中島さん)

子どもの頃は主人公の動きをずっと見ていたけど、大人になって読み返すと、その裏にある作者の哲学的なものとか世界観が見えて「ああ、こういうことだったんだな」って。そういう再発見の楽しみはありますね。あと、何の本を読んできたかって、どんなものを食べてきたかにすごく似てるなって思うことがあるんです。「ああ、この本が心の栄養になってきたんだな」って。皆さんもそんな感覚があるのではないでしょうか。(中村さん)

——大学生や大人にとって、国際子ども図書館はどのような魅力を持つ場所だと考えていますか。
国際子ども図書館はどなたでもご利用いただけて、入る際の手続きも必要ありません。どんな年齢の方でも歓迎いたしますので、上野公園などにいらっしゃった際に気軽に来館していただけると嬉しいなと思います。(中島さん)

国際子ども図書館は「建物を見る」「子どもの頃に読んだ本ともう一度出会う」「自分の子どもに本を読んであげる」「国立国会図書館として集めた図書を読む」など、いろいろな楽しみ方があると思います。ぜひ皆様にご来館いただけると嬉しいです。(中村さん)

 

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