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反田恭平が若者に伝えたい「クラシック音楽の魅力と未来」 時代を切りひらく信念に迫る

ドラマやマンガを通じて憧れた音楽の世界

――学生のときから『のだめカンタービレ』や『ピアノの森』はお好きだったんでしょうか

まず『のだめカンタービレ』⁽*¹⁾から入って、そのあと『ピアノの森』⁽*²⁾。『のだめ』は、ドラマもアニメも社会現象だったよね。クラシック音楽に興味ない子も観たって話をしてたし。テーマ曲のベト7(ベートーヴェン交響曲第7番)を広めた役割も大きいよね。

『ピアノの森』はショパンコンクール⁽*³⁾の話で、僕が高校生くらいのときにマンガが最終巻を迎えたんだよね。感動的だった。ちょうど僕もショパンコンクールに出たいと思い始めたころだったから、自分と重ねて読むところが多くあったし。アニメ版で阿字野壮介(主人公・一ノ瀬海の師匠)のピアノの演奏吹き替えをする話が来たときも、もし自分がショパンコンクールに出るんだったら担当しないほうがいいのかな、なんて葛藤もあった。結局はやってよかったって思っているけどね。

*1 『のだめカンタービレ』:音大に通う野田恵(愛称のだめ)や千秋真一を中心に展開されるラブコメディ。二ノ宮知子のマンガを原作にアニメ・ドラマ化され、大きな反響を呼んだ。

*2 『ピアノの森』:森に捨てられたピアノをオモチャがわりに育った主人公・一ノ瀬海が、ショパンコンクールに挑むストーリー。一色まことの原作マンガをもとにアニメ化された。

*3 ショパンコンクール(ショパン国際ピアノコンクール):フレデリック・ショパンの出身地ポーランドで5年に1度、開催される世界最高峰の音楽コンクール。ショパンの作品のみを課題曲とし、若手ピアニストの登竜門とされる。反田さんは2021年開催の第18回コンクールにて第2位を受賞し、大きな注目を浴びた。

――『のだめカンタービレ』の中で一番好きなキャラクターは誰ですか?

シュトレーゼマンかな。普段はちゃらんぽらんとしているけど、音楽に対する熱意が、実はすごい。僕の理想です。弟子である千秋やのだめに背中で見せるキャラクターはすごく好きだった。

――逆に「自分に似ている」と思うキャラクターは?

作品を俯瞰して見ていたから、ちょっとわからないなあ。なかなか自分と似てるキャラはいなかったけど、中学生のときにドラマを見ていたから「音楽高校とか大学って、ああいう世界が待っているんだ」と思ってた。『のだめ』はかなり誇張されているけど、僕が通っていた桐朋女子高等学校の音楽科もやっぱり個性的な子が多いから、遠からず近からずの世界だったよ。でも、ピアノ弾いて指揮もする人はいなかった。

男の子は母数が少ないからキャーキャー言われるのかと思っていたけど、意外とそうでもない。でも、桐朋マジックっていうのはあるんだよね。やっぱり、ある程度楽器が弾けるとちょっとカッコよく見えちゃったりする。だから、誰一人からもモテないっていう男の子はいなかったな。

自慢話になっちゃうんだけど、高校3年生で日本音楽コンクールに出て、最年少で1位になったときは、半年間で40人くらいに告白された。リアル千秋みたいだった(笑)。

――クラシック音楽の入り口として、マンガやアニメから入ってもいいのでしょうか

いいと思うよ。『のだめ』はクラシック要素に寄りすぎてないし、それが面白かったよね。ギャグ的な要素もあり、恋愛的な要素もありで。

コロナ禍以降、アニメはより身近な存在になったよね。『のだめ』も『ピアノの森』もNetflixで観られるし。まずは一回観てほしいですね。僕も、アニメとマンガから勉強してた。有名な曲からクラシック初心者にとって難しい曲まで出てくる、その塩梅がいいんだよね。

(『のだめカンタービレ』原作者の)二ノ宮さん公認なんだけど、僕はのだめを見てプロの指揮者とピアニストになった第一号だから(笑)。クラシックの導入にして欲しいですね。

「『のだめカンタービレ』と『ピアノの森』、おすすめです!」

ズバリ、クラシック初心者におすすめの曲は?

――クラシック音楽を普段聴かない人に「まずはこれを聴いてほしい!」というおすすめの曲を教えてください

まずは身近なクラシック音楽に興味を持つことが大事かもしれない。たとえばサッカーが好きな人だったら、応援曲でよく使われるオペラ『アイーダ』⁽*⁴⁾の『凱旋行進曲』とか。テレビをよく見る人だったら不動産のCMで使われているラフマニノフ『パガニーニの主題による狂詩曲 第18変奏』⁽*⁵⁾とか。映画好きの人なら、好きな映画で使われている曲だとか。

今の時代は、興味を持ったらYouTubeで調べて気軽に聴けるからね。

*4 ヴェルディ作曲/歌劇『アイーダ』:古代エジプトを舞台に、1871年に初演されたイタリア語のオペラ。

*5 ラフマニノフ作曲/『パガニーニの主題による狂詩曲』:パガニーニによるヴァイオリン曲の旋律をもとに1934年に作曲された、ピアノとオーケストラのための変奏曲。中でも18変奏は特に美しく、映画やCMでもよく使われる。

――どのような聴き方をすれば楽しめるでしょうか

これからクラシック音楽を聴いてみたいなという人は、本当に何でもいいと思うんだよね。

もう一歩踏み込んだ楽しみ方としては、演奏者や指揮者、オーケストラごとの違いを楽しみながら聴いてみることかな。好きなアーティストがいても、その人の演奏がすべてじゃないっていうのは覚えていてほしい。答えがない世界だから。演奏する側は可能な限り作曲家が弾いたものを再現しようとして、本や手紙を読んだり時代背景を探ったり、いろいろ勉強するんだけど、100%同じものは弾けない。どうしてもその演奏者の人生や経験が演奏に脚色を加えるんだよね。だから同じ曲だとしても演奏者ごとに違いが生まれる。指揮者やオーケストラもそれぞれに特色があるから、YouTubeとかで聴き比べてみるのも面白いと思うよ。

――CDやスマホではなく、コンサートホールに足を運んで音楽を聴く魅力は何だと思いますか

いろいろな意味でアクシデントがあるのがライブの魅力だよね。ミスのない完璧な音源を聴きたかったらCDでいいけれど、それを越えた何かを求めるから聴衆はライブに行く。会場の熱量であったり観客が息をのむ緊張感であったり、生演奏の醍醐味はそこにあるんじゃないかな。

コンサートホールでは、「アーティスト」「オーディエンス」「作品」の3つがうまくマッチしてはじめて感動が生まれるんだと思う。

同じ演奏を聴いた聴衆全員が等しく感動するわけじゃない。それは必ずしも演奏者側に問題があるわけではなくて。聴いている人の感情やその日その人に何があったか、曲の背景をどれくらい知っているかによって音楽を聴いたときの印象が変わるんだよね。それと同時に、アーティストの体調やコンディションも音楽に影響を与えている。そうして対等に存在している「聴衆」と「アーティスト」の上に「作品」がある。これらすべてがマッチしたときはじめて、コンサートで感動的な体験をすることができるわけだ。

だから、コンサートを聴きに行くとき、少しでもクラシック音楽に関する知識を持っていたほうがいい体験ができると思う。

クラシックが好きな人って結構多いし、曲や作曲家について扱う番組とかがもっと増えてもいいと思うんだよね。だから僕はなるべくいろいろな媒体に出るようにしている。演奏家のメディア露出は確実に増えてきているし、YouTuberとかショパンコンクールをきっかけに、クラシックに興味がある層は多くなったと思う。そこから一歩踏み込んで、作曲家のエピソードや曲の背景知識を学べる番組やラジオがもっとあればいいなと思います。

「コンサートホールでは『演奏者』『聴衆』『作品』の3つがマッチしてはじめて感動が生まれます」