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國本未華インタビュー前編 ~気象予報士が天気を伝える時に考えていること~

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「天気予報を伝える」だけがお天気キャスターの仕事ではない!?

多方面で活躍されている気象予報士の國本未華さんに、お天気キャスターに憧れたきっかけや、天気を伝える際に気をつけていること、子どもに天気の魅力を伝える取り組みについて伺いました。

 

國本未華

早稲田大学在学中に資格を取得し、NHKやTBSなど各局に出演。子どもに天気の楽しさを伝えるワークショップ「こども天気部屋」などの活動も行っている。クリオネが大好きで、自作のクリオネグッズを展開するオリジナルブランド「Kunimone」も運営中!

今年になって『クイズでなっとく!あしたの天気はどっち?(三笠書房)』『空ときどきクリオネ(成山堂書店)』『クリオネのはなし(成山堂書店)』と3冊の本を相次いで発売した。

 

國本未華さん お天気プロフィール
國本未華さん お天気プロフィール

國本さんがお天気キャスターになるまで

——天気や空への関心は子供の頃からあったのでしょうか?

空そのものよりも天気予報の番組が大好きで。それが気象に興味を持つようになった一番のきっかけですね。地図のパズルが好きだったこともあり、テレビに映る日本列島の地図や、そこについている天気マーク、そしてそれを説明してくれるお姉さんがいるのが好きだったんです。それが小学校低学年くらい。毎朝必ず天気予報を見てから学校に行く子供でし 


——お天気キャスターのどんなところが好きになったんですか?

天気って毎日変わるもので、生活にとても密着した情報なんですよね。それを伝えるキャスターの優しいお姉さんがすごくキラキラしてて。キラキラしているだけじゃなくて、生活のために重要な情報を伝えていて、暮らしを豊かにするために必要不可欠なものでもある。そういう、誰かの生活の支えとなる存在に自分もなりたいなと。

大学二年生の時に、早稲田祭の企画を一から立ち上げた友人に刺激を受けて、改めて自分がやりたいことは何かを考えたんです。原点に立ち返って、憧れだったお天気キャスターになりたいと思い、気象予報士の資格を取得しました。

 

——情報量の多い気象データについて伝えるときに大切にしていることは?

「その日に伝えたいポイントを必ず1つ持つ」ことですね。天気って晴れか雨か、気温がどうかとか、ポイントの置き所が色々あるんですよね。ポイントを見極めて、ここだけはしっかり伝えようというところをまず決めています。


——伝えたいことの軸はどのように決めていますか?

日常で感じることを中心にします。暑い日に「明日も暑いかな」、雨が降っていたら「いつ止むんだろうね」みたいな。


——たとえば、今日(6月13日)は何がポイントになりますか?

予想より曇ってるんですよね(笑)。梅雨入りしたので、次にいつ雨が降るのかに注目します。あとは明日以降の暑さの話を伝えたいかも。災害の観点で話さなきゃいけないこともあります。暑さはこの時代だともう災害なんですよね。

取材を受ける國本未華さん

——NEWS23では、國本さんは「季節の言葉」というコーナーを担当されていました。毎日どのように言葉を選んでいたんでしょうか?

これ、本当に地道な作業なんですよね。 季語集とかでいろいろな言葉をインプットして、前後の天気の状況に合わせて「今日はこれだ!」っていう言葉を持ってきていました。 ただ、ネタが尽きてくるのが結構大変で。かなり読み込んでいました。小難しい季語ではなくて自分の言葉で話せるものを選んでいましたね。 

しかも、これを伝えるの5秒なんです。


——えっ、5秒ですか?

CMあけて、5秒で「節分がなんとかかんとか」って言ってまたCM、みたいな。一回だけ5秒をオーバーしたことがあります。後ろが切れちゃった。


——すごい命中率……

CM中めちゃくちゃドキドキしてやっていました。出だしが遅れるともう取り返せないので。


——たとえば「朝茶が美味いと天気がいい」というのはどういう意味ですか?

高気圧に覆われると、空気が乾燥するんですよ。そうなると喉も乾燥するからお茶が美味しいっていう、観天望気(※)に近いものですね。こういう天気のことわざって結構いろいろあって。メカニズムや科学的根拠が明確にあるものもあれば、意外と大雑把なものもあるんですけど、その辺も紹介したことがありましたね。

こうして番組の企画をスタッフさんと一緒に作っていくのも、お天気キャスターの仕事の一つです。天気を予報するだけじゃなくて、コーナーも一緒に作っていく。

※観天望気:空の色や雲の動きから天気の変化を予測する方法


——防災について視聴者に行動を促すために工夫されたことはありますか? 

一番大事だけど、一番難しいところなんですよね。災害につながる恐れがある天気現象を予測して伝えるときって、煽ってもいけないし、かといって軽く流してもいけなくて、私も毎回悩むところです。でもその中でできるだけ視聴者の心を動かすようにしたいなと思っています。「この雨はこれまでになかったようなことが起こるかもしれない。それぐらいの雨です」とか、その天気現象で何が起こりそうかを具体的に話すこともあります。災害報道に答えはないので、災害のたびに、伝え方がどうだったか振り返る時間も作っています。


「天気予報を伝える」にとどまらないお仕事

——児童書『クイズでなっとく!あしたの天気はどっち?』の刊行や、子どもを対象にした天気教室「こども天気部屋」など、キャスター以外のお仕事にも取り組んでいらっしゃいますが、子どもに天気の魅力を伝えたいという思いからでしょうか

やっぱり自分が子どもだった頃に天気予報を好きになったところから私の夢が始まっているので。子どもの時から天気に触れる機会を作ってあげるっていうのが大人になった私から子どもたちにできることかな。

「こども天気部屋」は企画も準備も毎回本当に大変なんですけど、イベントが終わると、やってよかったなって思うんですよね。それを糧に来年もやろうって思えます。遊び・体験・実験・工作の4本柱でやってて。一人ひとり、どれかしらのコンテンツが刺さって、好奇心をかき立てられたらいいなと思ってやっていますね。

気象予報士國本未華さんがお天気教室「こども天気部屋」で講演する様子


——工作グッズも一つひとつご自身で考えられているんですね

工作は好きなんですが、形にするまでが試行錯誤の連続で。ただ作って楽しかったっていう思い出になるだけじゃなくて、実際に使い続けてもらえるにはどうしたらいいか考えていますね。

手回しの充電器を使ったことがあるんですけど、子どもって回すのとか好きだよなぁとか。あとはシールを貼るとかキラキラしたものを集めるとか、子どもの頃に自分が好きだったものと照らし合わせて企画を考えています。 


——ショッピングモールのおもちゃ売り場にも実際に行かれたそうですが、そういったところからも発想を得ていらっしゃるんですか

私が子どもの頃って30年近く前なので。今の時代の子どもたちが何を楽しいと思うのか、参考にするために見に行きます。おもちゃをつくる中で自分の大事にしたい要素を書き出すんですよ。「楽しい」「遊べる」「防災」みたいな。その中で面白そうなものから考えて、時間をかけて作っていきます。


——児童書やイベントの中で、子どもに天気のことを伝える上で意識していることはありますか

子どもって本当に難しくて、何を知ってて何を知らないのかも人それぞれだし、興味ない話は聞いてくれない。本で伝える時は視覚的にパッと開いて分かる、見て分かるというところを意識しています。イベントでは、まずはちょっとびっくりさせるとか、興味を引くところから入りますね。実験から始めて、わあすごいとか面白いと思ってもらってから、実はこれはね、こういう仕組みなんだよって紐解いていく。


——イベントがきっかけでお天気キャスターに憧れたり、天気のことを勉強するようになったり、子どもの興味に関われる素敵な活動ですね

ありがとうございます。実際、このイベントに毎年のように来てくれてる子もいて、その子から手紙をいただいたことがあって。「國本さんみたいなお天気キャスターになりたい」って書いてくれていて、私の活動がこうやって響いている子がいるんだなって、すごく嬉しかったです。そういうのがモチベーションになって続けられてるっていうのもありますね。

國本未華さん個人HP https://kunimoto-mika.amebaownd.com/

【後編記事案内】

インタビュー記事後編では、國本さん流の天気の楽しみ方観天望気のコツを伺いました。さらに、マス研員が取った空の写真を気象の観点から分析していただく企画も!

後編記事はこちらから!