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自分らしく生きる権利を求めて――早稲田でたたかう 早大院生・春藤優さん

「大隈重信像の奥に見えるレインボーフラッグだって、ずっと座って待っててできた訳じゃない。
自分らしく生きる権利を求めて立ち上がった、多くの先輩がいるんです」

 セクシャルマイノリティの権利やジェンダー平等をテーマに活動する、早大院生の春藤優(25)さんは言います。同性婚訴訟が進む一方、旧統一教会をはじめとした保守派のジェンダーバックラッシュがいまだある中で、アクティビストとしての歩み、早大の現状や学生へのメッセージを伺いました。

 


 

——入学当初から積極的に活動されていますよね。高校時代から社会的な関心を抱いていたのですか?

 

「私は2016年に入学したので、前年の渋谷区パートナーシップ条例や国会前での大学生の抗議をニュースで見て、高校生なりに思うところはありました。しかし、私のいた高校では社会的な関心を持っている同級生がいたわけでもなく、高校生だと毎日都心に出てくるのも大変なので、高校時代から積極的に活動していたということはなかったですね。ただ、70年代みたいな感じですけど、大学生といえばやっぱり政治だろうと思っていたところがあって(笑)」

 

——そこから、LGBT学生センターの設置を目標にしているダイバーシティ早稲田に、1年生の春に入ったんですね。

 

「入学したときは、セクシャルマイノリティのイシューについて全然知らなかったんですよ。自分の性の在り方に迷っていたけど、自分を上手く表現する言葉を持っていなくて『私は何者です』と説明できないので、セクシャルマイノリティの当事者サークルに入らなかったんですね。で、自分や社会の在り方に迷っていたときに、誰か先輩に会えて、自分のことを説明しなくていい場所として、ダイバーシティ早稲田に辿り着きました。そこから、qoonというソーシャル系のイベント企画サークルとも繋がったりもしました。」

 

——学外との交流もあったんですか。

 

学外とのつながりでいえば、性暴力に反対する早大生のグループである『シャベル』という団体で活動していました。これは、ちゃぶ台返し女子アクションをハブにして同時多発的に、上智大学の『Speak Up Sophia』、東大の『とっとこ』、創価大学の『Be Live Soka』、ときどき慶応の子たちが顔を出すとかっていう緩い繋がりがあって、それが早大ではシャベルだったんですね。

 

——春藤さんは、かなり早くからお顔もお名前も出して運動していますよね。ためらいはなかったんですか。

 

「私はそれなりに家族とも良好にやっていて、早稲田大学に入ってうまくやっていけるくらいには社会的・経済的に恵まれた立場にいるなっていう自覚は強くあるんですね。一方で、顔出しで喋りたくても無理な人はいっぱいいます。だから、その人たちの言葉を代弁することはできないけれど、話しても安全な立場であれば、逆にその立場で話すっていうことがあってもいいんじゃないかと思います」

 

——マスコミ研究会では、GSセンターの設立5年ということでGSセンター事務所にもインタビューをしています。前身のダイバーシティ早稲田から関わってきて、印象的な出来事はありますか。

 

 

「早稲田ウィークリーで記事になりましたが、軽井沢のセミナーハウスに行ったことが印象に残っています。実際に大学が管理している施設に行ってみて、特権的な人間だけが使えるような施設になっていないかを見るというのは、1番GSセンターらしいし、実りのあることだったと思っています」

 

——そうした今日の成果があるのは、学生スタッフの皆さんがしっかりと共通の目的意識を持ってやってこられたというところがあるのでしょうか。

 

「そうですね。最初の頃『なんかわからないこと多いけど、皆で頑張ってこれ(GSセンター)をどうにか動かすー!』みたいな感じでやれていたのは、やっぱり当事者性があって学生は学生なりに困っていたからこそです。

あるいは、GSセンターのメンバーに入って勉強するなかで、いろんな学内の課題が見えて『このままだとあらゆるセクシュアリティの人が安心して過ごせるキャンパスじゃないよね』という問題意識が形成されるからこそ頑張れる。そういった当事者性や問題意識からというのは、ちょっと運動っぽいですね」

 

——​​生活の必要があるからこそ、継続的に要求を展開できるということですか。

 

「そう。学生スタッフは現在有給ですが、目の前にある課題をどうにかしたいから、無給でも本当はいいんだけれど頑張る。でも、やっぱりこれは先輩たちが勝ち取った地位でもあるし、山のように無給で働いてきた人たちがいるから、こういうふうな制度と箱が今は用意されている。そして、それを貰うからには果たさなきゃいけない使命がある。そういうちょっと運動っぽいところ、ただのアルバイトとは違うところは、モチベーションの1つになっていましたね」

 

——早稲田大学の現在の課題は何でしょうか。

 

「ぱっと思いつくのは、ハラスメントの問題です。昔から言われてきたことではあるけれど、似たようなハラスメントの事案が定期的に起こる。変わっていかないことに対して焦りと憤りがすごくありますね。結局そういうことがあると、GSセンターってあっても、外に向けてのイメージとしてキラキラ虹色ダイバーシティで、早稲田大学はすごく進歩的な大学なので、みんな来てねっていう」

 

——それこそ、社会的イメージや経済的利益のために食い物にする、ピンクウォッシュにしかならないということですか。

 

「そうそう、それにしかならないわけですよ。ダイバーシティ早稲田の人たちが切実に願っていたのは『安全に学生生活を送れる環境を大学が作ってほしい』ということですよね。それを収奪されてしまうのは──収奪するつもりはないのかもしれないけど──それはどんなセクシュアリティだったとしても、ハラスメントが起こったときにきちんと対応するっていう大前提がないと意味がないと思わざるを得ないですよね。だから、『5年間見てきてどうですか』と訊かれて『すごく良くなったです』って言えればよかったんですけど、残念ながら全然そんなことはない」

 

 

——社会運動に関心を持ちつつも一歩踏み出せない学生読者も多くいます。何かメッセージがあればお願いします。

 

「運動やれば、友達増えるよ(笑)。大学生になって自由な時間が増えたり、行動範囲も広がったりして、バイトの賃金とか、あるいはサークルで性的な冗談を言われるとか…ムカつくこともあると思うんですよね。

そういうとき、それを忘れるために友達と飲みに行くんじゃなくて、ムカついたことを話す友達を作るといいと思います。そうすると、意外とあなた以外の人も同じことでムカついて、それが実は何かしらの大きな社会的な問題と繋がっていたりするんですよ。そうやって自分自身の抱える生きづらさみたいなものが、実は社会の仕組みによるものであるというのを知り、いろんな人と繋がっていくのも、大学という場所なんです」

 

春藤優・しゅんどうゆう
早稲田大学法学部を経て、同大学院法学研究科博士後期課程在学中。同大法学部助手。早大入学時から、セクシャルマイノリティ学生の人権や学内性暴力への反対などをテーマに運動する。22年7月の参院選では、社民・福島みずほ氏への応援演説動画が話題を呼んだ。

 

 

編集後記

 

 私たちは「何者か?」を日々問われる。国籍、所属、人間性。自分が「何者なのか」を正確に言語化できる人はどれほどいるだろうか。

こと性別においては身体の性、心の性、好きになる対象など、複数の要素がグラデーション的に合わさって自覚するものである。その曖昧さを粗雑に「男/女」の二つに強制的に分けられる現代社会の仕組みには疑問が募る。

春藤氏は、その疑問を早稲田大学に、そして社会全体に訴え続けてきた。彼女がGSセンターやシャベル等での活動を介し、大学に対して起こしたいくつもの行動をもってしても、「本質的に早稲田のハラスメントの状況は変化しない」と憤る姿が印象的だった。早稲田大学からハラスメントが撲滅され、「誰もが安心して過ごせる早稲田大学」を実現するためには長い闘いを要する。春藤氏をはじめとする多くの人々の軌跡を眺めて終わるのではなく、今こそ私たちがその意思を引き継ぎ、行動を起こす時なのだ。

大隈像の奥に堂々と掲げられたレインボーフラッグは、早稲田大学を変えようと全力を注いだ先輩方の努力の証拠であり、「何者か?」を問われ続ける社会で私たちが小さな行動を起こす勇気をくれる。