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【テレビドラマ】岡室先生にインタビュー!

早稲田大学 岡室先生 ドラマ インタビュー

ーー欧米と日本のドラマを比較して演技、尺、脚本の作り方、構造だったりに何か大きな違いはありますか?

 大きな違いは、日本のドラマは相対的に脚本家の地位が高いんですよ。それはなんでかって言うと、70年代ぐらいに山田太一さんとか、倉本聰さんたちが脚本家の地位 を築いたことが大きい。例えば、『山田太一シリーズ』みたいに脚本家の名前を冠するドラマがあったりとかね。 なので、割と脚本家の作家ががすごく重視されてきたんですね。日本では、特に70年代後半に山田太一、倉本総、向田邦子っていう三大脚本家がいたりして、「脚本家でドラマを見る」という文化が起こってきたんですね。今は皆さん多様な見方をしてると思うけど、私は今でもやっぱり脚本家の名前でドラマを見るところはあるんですよ。
 対して、アメリカや韓国やイギリスといった国では、脚本家が単独で書くってことはあまりないですね。大体チームで書いてるんですよ。 マーケティングをベースに何がうけるかといったことをチームで書く。だから、面白いけれども心に残らなかったりするんですよ。ただ、もちろん優れてるものもあって、今例えばNHKでも、作家性を損なうわけじゃなくて、元々作家性を持ってる人たちでチームを作ってクオリティの高いものを作ろうという動き(※脚本開発チーム WDRプロジェクト)もあるんですね。

ーー日本のドラマの脚本家の役割の大きさについておっしゃっていましたが、その他に世界における日本のドラマの立ち位置や特異性といったものはありますか?

 日本って、1953年にテレビ放送が始まって、60年代、70年代辺りに、ホームドラマの全盛期っていうのがあるんですよ。
 それは戦後民主主義の影響が大きいと言われています。戦前や戦時中って、家父長制で、女子供は意見が言えない風潮があったじゃないですか。で、戦後になって、 解き放たれて、戦後民主主義って話せばわかるっていう思想が前提にあるので、そうやってみんなで話し合って家族の問題を解決していく、みたいなドラマが増えていったんですよね。
 多分そういうとこから来てるんだと思うんだけど、日本のドラマってホームドラマじゃなくても日常会話からドラマが動いていくものが多いんですよ。例えば坂元裕二さんとか宮藤官九郎さんもそうだと思うんですね。 自分たちの日常会話とか日常感覚をベースにドラマを立ち上げていく。それは大きな特徴のような気がしますね。だからね、ストーリーが目まぐるしく動いていくようなアメリカのドラマの影響を受けたドラマもあるんだけど、その一方で、ストーリーで動いていくのじゃなくて日常会話の中から、ドラマが立ち上がっていくものが脈々とあるっていうことですかね。例えばアメリカのドラマの影響を受けて、ダイナミックにストーリーが展開していくのが、『VIVANT』みたいなドラマですね。

ーー2024年やその先には、どういった世相を反映したドラマが現れてくると考えますか?

 今、日常系ドラマがまた人気あったりするじゃないですか。例えば『ブラッシュアップライフ』とか『日曜の夜ぐらいは..』とか、そういう日常系のドラマの路線は続いていくと思います。
 あと恋愛ドラマが、 ちょっと変わってきたかなと思っていて。『恋せぬふたり』っていうNHKのドラマがあって、アロマンティック・アセクシャルの人たちを描いたとてもいいドラマでした。それまでのドラマの一般的な傾向って男性と女性が仲良くなると、恋愛に発展するっていうパターンだったと思うんだけど、そこに疑問が呈されたと思うんですよ。恋愛しない人もいるし、 したくない人もいるし、別に恋愛にならなくたっていいじゃんっていうことで、むしろ恋愛にならない男女の関係が描かれるようになってきてる気がするんですよ。他にも『石子と羽男』とかね。すごくいい関係で信頼し合ってるけど、そこで別に恋愛にならないドラマが増えてますよね。それはなんかいいなあと思っています。まあ、恋愛ドラマは恋愛ドラマで存続はしていくと思いますけどね。
 他にも女性の描き方が変わっていってほしいなっていうのはあって。例えば法曹界を描いたドラマっていくつかあるんだけど、型破りな男性の弁護士とか裁判官がいて、堅物の融通の効かない若い女性がいて、その女性を色々ものの分かっている男性が導いていくみたいなパターンが多いんですが、私はそれがすごく嫌で。実直であるとか、真面目であるとか、そういうことが悪いことのように描かれる。融通が効かないみたいに描かれる。別に作ってる人たちは、女性差別しようとか全然思ってないでしょうけど、無意識に反映されちゃう面もあるかもしれない。たとえば漫画の『ミステリと言う勿れ』で、男性の社会ってなあなあで、女性はなあなあを許さないから男性にとっては疎ましかったり、めんどくさかったりするんだって、主人公の久能整が言うんですよ。ドラマ版の『ミステリと言う勿れ』の初回でも、そこは描かれていました。 『石子と羽男』も、男女が対等で影響を与え合っていてよかったです。だから、そういう無意識の差別みたいなものがなくなっていくといいなって思いますね。
 今って希望のない時代じゃないですか。だから、人間の良さを描いてくれるドラマが出てくるといいなと思うんですよ。今何を信じたらいいかわからない雰囲気もあるし、 でも、ドラマってやっぱりある種価値観を形成していくものでもあるので、フィクションの中で、表面的にではなく「よく生きる」ということをちゃんと描いてくれるようなドラマが出てくるといいなとは思います。予測というよりは希望ですね。