第1回のテーマは「室内あそび」。
ほんの短い休み時間にも、悪天候で外に出られない日も、子どもたちは遊び心を働かせます。
さて、我々大人はどう過ごす?
あやとり
子どものころ、輪にした紐の向こう側には無限の世界が広がっていた。指先で紐をとってつくられたかたちの、すこし指を動かせば崩れてしまう儚さが好きだったけれど、同時に喪失感が怖くもあった。大人になった今、久しぶりにあやとり紐に触れる。ごわごわした毛糸の感触。祖母を思い出した。わたしに手遊びを教えてくれたのは、祖母であった。記憶を頼りにほうきやはしごをつくっていく。手の記憶というのはすさまじいものである。糸のとり方も、皺の寄った手のあたたかさも、まだこの手は覚えている。昨今のウイルスの影響でなかなか会えずにいる祖母。元気でいて。貴女はまだ、手遊びを覚えているだろうか。きっとまた、一緒に。
トランプ
5畳ほどの狭い生徒会室で顔を突き合わせ、日が暮れるまで大富豪をしながら語り合った。進路、勉強の悩み、好きな人について。今思えば、あのころはよくわからないことに腹を立て、泣き、笑った。そんなどうにも空漠としたものが輝いていた。またあの狭い部屋に集まって大富豪をしたなら、毎日を無邪気に、ただ生きていたころに戻れるだろうか。大人になった今、苦労して覚えた無数のルールはところどころおぼろげになっていた。けれど、カードを引き抜くたびに、あのころの記憶がはじけてひかる。生徒会室のわたしたちが、今のわたしを見つめているように思えた。耳の奥でかすかに響く彼らの笑い声に、つられてすこし、笑みがこぼれた。
大富豪・ルール
① カードは数字によって優劣が決まっており、3・4・5~K(13)・1・2の順で強い。
② 手札をルールに従って出していく。場に出ているカードよりも強いカードを自分の手札から出していき、手札が早く無くなった人が勝利。
③ 早く勝った人から順番に、大富豪、富豪……と階級が割り当てられる。最下位のプレイヤーは大貧民となる。
④ 次戦は割り当てられた階級に応じて、自分より階級の高い人に強いカードを渡してからゲームがスタートする。
大富豪では、カードにルールを設定できる。
・8切り → 8を出すと強制的に場が流れ、8を出したプレイヤーから新たにカードを出すことができる。
・11バック → J(11)が出ると、一時的にジョーカー以外のカードの強さが逆転する。場が流れるとその効果はなくなる。
以下のようなローカルルールも存在する。
・5スキ → 5が出ると、5を出したプレイヤーを起点に、場に出された5のカードの枚数分順番を飛ばしてゲームを進める。
・7渡し → 7が出ると、7を出したプレイヤーは場に出した7のカードの枚数分、次の人に手札からカードを渡すことができる。
・10捨て → 10が出ると、10を出したプレイヤーは場に出した10のカードの枚数分、手札からカードを捨てることができる。
おはじき
はじめておはじきに触れた日のことを、よく覚えている。気まぐれに父が買ってきたのだ。日差しにかざすときらきらして、それはたからものだと思った。一番お気に入りの空き箱にしまいこみ、毎日飽きもせず眺め続けるわたしを、父は困ったように微笑みながら見つめていた。「おはじきはね、こう遊ぶのだよ」しばらくたったある日、父はそういいながらおはじきをはじいた。寡黙な父であったから、そんな遊び心を意外に、またうれしく思った。そうしてわたしは大人になったけれど、はじけて広がった鮮やかなきらめきが、今でも脳裏に焼き付いている。久々に触れるおはじきはひんやりとして、やはりきれいだった。指先で力強くはじく。一瞬、自分の手にあの日の父の手を見た。大きな手。刹那、きらめきが眼前に広がる。
おはじき・ルール
① 机の上におはじきを散らす。
② 自分がはじくおはじきと当てるおはじきを決めて、その2つを結ぶ線に対して十字を切るように指で線を引く。
③ 指ではじいて、当てられたらその当てたおはじきを獲得できる。
④ ②~③をジャンケンで勝った人から順に行い、1番多くのおはじきを持っていた人が勝ちとなる。
いかがでしたでしょうか。
なにか1つでも、皆さまが懐かしく、またやってみたいと思うきっかけになるものがあれば幸いです。
さて、次回は「特別な場所でのあそび」をテーマにお届けする予定です。お楽しみに!