「Atelier Chocossy」代表・小清水圭太さん。お菓子細工の講習を行う一方で、自身もお菓子細工の大会「ジャパンケーキショー」にも作品を提出しています。
第二回となる今回は、小清水さんがお菓子細工に目覚めたきっかけや、ジャパンケーキショーに提出した作品についてお伺いしました!
北海道出身 1993年生まれ
にいがた製菓専門学校えぷろん卒業後、
都内チョコレートショップを経て
2016年よりチョコレートOEM企業にて勤務
2018年パティシエとして勤務後、
2021年アトリエチョコッシー開業。
前代未聞の作品未提出から金賞獲得⁉︎ 小清水さんがお菓子細工に目覚めたわけ
記者:小清水さんは、なぜパティシエを目指したのですか?
小清水さん:もともと物作りが好きで、最初は高専の物質工学科に行っていました。そのときはいずれ大学に行って、工学系に進もうと思っていたのですが……。研究室にこもっている自分が想像できなくて。お菓子だと喜んでる人の顔が見えやすいかな、という思い付きで新潟の製菓学校に進学することになりました。
記者:小清水さんは「物作りがしたい」という気持ちがあったのですか。では、お菓子細工にはじめて出会ったのはいつだったのでしょうか。
小清水さん:新潟の専門学校で飴細工の存在を知り、こういう世界もあるのかと思いました。 学校で業界紙を見て、チョコ細工やマジパン細工など色々な菓子細工があると知りました。
記者:お菓子細工との出会いは学校がきっかけだったのですね。小清水さんは2013年に ジャパンケーキショーで金賞を受賞されていますが、そのときの状況について教えていただけますか?
小清水さん:確かに学生の部で日本一を獲れたのですが、実はその前年に初めて挑戦した時は 作品が完成しなくて……。「(作品を提出できないなんて)前代未聞だ」と、学園長に怒られてしまいましたね。
記者:そんなことがあったのですね。なぜ完成しなかったのでしょうか。
小清水さん:作品が全然思ったように作れず、計画性もなくてボロボロでした。そのときはマジパン細工で、社交ダンスをしている人たちを作ろうとしたのですが上手く作れなくて。ピアノ奏者だけが完成して終わりました(笑)
記者:ではなぜ、翌年に日本一の作品を作り出せたと思いますか。
小清水さん:一度目の大会で作品が完成せず、もう二度と作りたくないと思ったのですが、周りの友人達が大会で受賞していく姿を見て、もう一度出場しようと思いました。そこでハロウィンをテーマにしたマジパン細工を作り、1位を獲ることができました。
記者:受賞した時の感想や、周りの反応はいかがでしたか。
小清水さん:金賞を獲ったときは、めちゃくちゃテンション上がりましたね。ガッツポーズした気がします。先生は「プロ部門に出しても良いところいったかもね」と言ってくれました。学校としてもマジパン細工で1位を取るのは初めてでした。周りも「ついにやったね!」と祝ってくれました。
記者:「前代未聞」と叱られたところから金賞を獲ったわけですね。優勝した作品のこだわりを教えていただけますか。
小清水さん:大会の過去作品や、大会の審査員ウケをひたすら研究して作りました。色合いだったり、お人形の数だったり、流行も分析していました。当時は、ハロウィン・クリスマスといった王道のテーマが強く、青色などは嫌われていました。
記者:受賞作品を作る上で、どのくらいの期間、練習や試作に費やしたのでしょうか。
小清水さん:デザインの期間を入れると、1年ほどかかりました。デザインを1年前に考え始めて、半年前から試作をはじめました。
▲2013年作品のデザイン
記者:作品作りにあたって、難しかった点はありますか?
小清水さん:難しかったのは、色ですね。色を微調整しながら、トータルで3,4回ほど、全体から作り直しました。あと、本番は絶対に粗が無く、360度どこから見ても綺麗に見えるようにする必要があり、神経を使って作りましたね。
記者:奥が深いんですね。
小清水さんにとってのお菓子細工
小清水:チョコ細工は細かく設計が必要です。大会などの作品だと、設計やデザインは半年前に完成していることが多いかと思います。
記者:半年も前からですか……。
小清水:そうですね(笑)。むしろ1年間ずっと「どうしよう」と考えています。
記者:2021年ジャパンケーキショーの作品についてですが、制作で何を意識しましたか?
小清水:やはり大会なので審査員ウケは意識しました。作りたいものを作るだけでは大会には向かないと思います。高い評価をもらえるよう過去の受賞作品を分析し、工夫するようにしています。今回の作品では、「S字のライン」や「赤い花」など大会では王道のパーツを取り入れました。色味も赤や緑が受けやすいので、花や植物を加えています。また、着色しすぎるとチョコらしさがなくなるので、チョコの色を残せるところは残すようにもしました。
記者:金属や植物に見えるチョコはどのように作りましたか?
小清水:金属らしく見せるために、錆びた質感を表現するチョコ用のパウダーを用いる、チョコを磨いて光沢を出すなどしています。苔は色をつけたチョコを細かく刻んでまぶすことで表現しています。花びらや葉っぱはプラスチックの型にチョコを流して作りました。
記者:作品の中で気に入っているパーツはありますか?
小清水:特にこの銅線は気に入っています。
小清水:冷やした鉄板の上に溶かしたチョコレートを細く素早く絞り、固まりきる前に成形するという方法で作りました。鉄板が冷えすぎていても、すぐチョコが固まってしまい成形できず、温かすぎるとチョコが固まらないため、試行錯誤して作業に向いている温度帯を見つけ出しました。こちらは大会2週間前に思いつきで付け足しました(笑)
記者:作っている最中は何を考えていますか?
小清水:製作途中は、全てが面倒臭いですね。この作品は特にパーツの数が多く、鱗が特に大変でした。柱全部に一枚一枚 鱗を貼ることを繰り返し、地獄の作業でした……。しかし、ある程度作品の姿が見えてくると、テンションが上がり「俺は天才かもしれない!」とも思います(笑)
記者:作品はどのように運んでいますか?
小清水:チョコ細工はとても繊細で壊れやすいため、慎重に運びます。車に乗せて時速30キロくらいでノ ロノロ走らせ、坂道に合わせて傾けて壊れないようにしました(笑)
記者:最後に1点気になるのですが、完成した作品は食べますか?
小清水:食べません。基本的に細工には賞味期限切れのチョコを使っており、チョコを無駄遣いしないようにしています。飾るためだけのチョコですね。
今回のインタビューを通じてお菓子細工の奥深さや小清水さん自身に魅力を知ることができました。興味のある方は以下のAtelier Chocossy HPからお菓子細工に挑戦してみてはいかがでしょうか?
〒1810002 東京都三鷹市牟礼2-16-11
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