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君の心を射貫く言葉がここに! コピーライターこやま淳子インタビュー

こやま淳子さんアイキャッチ

心に響く数々の広告コピーを制作されている、早稲田大学出身のコピーライター、こやま淳子さんにお話を伺いました。
人の心を動かす言葉はどのようにして生まれるのか。知られざる広告コピー制作の世界に迫ります。

 

【 こやま淳子さんのプロフィール 】

コピーライター・クリエイティブディレクター。
京都生まれ。
1995年 早稲田大学商学部を卒業後、コピーライターへ。
TBWA/JAPAN、博報堂などを経て、2010年4月に独立。
広告コピーを中心に、さまざまなコミュニケーションのコトバをつくる仕事に従事する。
好きなものは、落語ときものとマンガとマンボウ。最近はポケモン GOも。
東京コピーライターズクラブ(TCC)会員

 

こやまさん
こやま淳子さん

——コピーライターとしてどのようなお仕事をされていますか︖

 コピーライターは、広告の⽂章を書く⼈って意味なんですよね。でも実際は⽂章を書くだけじゃなく、経済活動にまつわる企画を、言葉に責任を持って携わる人って感じで、私の場合は何でもやりますね。 CMもポスターもインターネットもやるし、社内を⼀つにするために「うちはこういう会社です」って⾔葉を決める企業ブランディングや、世の中に何を約束するかっていう⽂章をまとめる仕事も最近増えてますね。

 

——コピーが出来上がるまでのお仕事の流れを教えてください。

 ケースバイケースなんですが、まず、どんな広告にしたいのかというオリエンテーションをクライアントから受けるんです。そこから、広告はチームワークなのでいろんな専⾨家が集まって施策を考えます。オリエンテーションの内容を振り返るためにみんなで⼀回打ち合わせし、各⾃で考えたアイデアを持ち寄ってまた打ち合わせして、それをまとめてクライアントにプレゼンするという感じですね。

 信頼関係がある場合は、アートディレクターの絵と私の⾔葉を合体させて成立してしまうこともありますが、多くの場合は、⾔葉と絵の相性とか、それぞれの表現の違いについて議論が必要なんです。商品の何を売りにするかについて、もちろんクライアントがPRしたいことは考えるけど、「いや、商品のこれが⼀番の売りなんじゃない︖」って私たちも考えてチームで擦り合わせる。それでも意⾒が合わない場合もあるので、最終的にはクリエイティブディレクターが統率する感じですね。

 

—— コピーを考える際に、ルーティーンはありますか︖

  まずクライアントが何を考えているのかヒアリングします。でも、それが全然世の中のニーズと合わないこともあって、⽇々の⽣活の中で「⾃分なら何と⾔われたら買うかな」とか⾊々考えることが⼤事ですね。「こういうことが言いたい」という気持ちと、経験により培ってきた表現の技術が合わさって、⾔葉として出てくると思うんですよね。うまく出てこないこともあれば、ある⽇急にいいのが出来たってなる時もあります。

 

—— コピーを考える上で⼤切にされていることはありますか︖

  コピーって、やっぱり慣れてくると書けてしまうんですよ。だからこそ逆に、「本当にこれは⼈が動く⾔葉なのかな」といつも疑うようにしています。あとは、普段から世の中の⼈たちが何を考えているかを知っておくのも⼤事ですかね。住む場所や世代が違うと全然違うことを考えていたりするので、知る努⼒っていうのは⼤事だと思います。

 


——今までいろんなコピーを⼿掛けられてきたなかで、特にやりがいのあった仕事を教えていただきたいです。

  プラン・インターナショナル・ジャパンという団体の「13歳で結婚。14歳で出産。恋は、まだ知らない。」っていうコピーは、割と世の中にバズったというか、響いた⾔葉でした。実際にこれを⾒た中学⽣が⼤⼈になってNGOに⼊ったそうです。この団体は世界的に活動していて、ネパールに取材で⾏かせてもらいました。絵と⾔葉だけで結構世の中の⼈が反応してくれるんだって思いましたね。交通広告とか新聞広告とか、わりとオーソドックスな媒体での広告で、資料請求がその前の年の3倍くらい増えました。やっぱり表現が強ければ⼈の⼼を動かせるじゃんって思えた、原点のような仕事ですね。

 

こやまさんが手掛けたキャッチコッピ―。プラン・ジャパン
プラン・インターナショナル・ジャパンのキャッチコピー


——他に印象的な仕事はありましたか?

 最近みずほ銀⾏の新⽣活キャンペーンで「誰だって、新しい⼀歩の前ではふるえてるんだ。」っていうコピーを書いたんですよ。新⽣活っていうと、銀⾏とかは特に明るいCMが多いんです。だけど、実際世の中の⼈は不安でいっぱいなのに、明るいことを⾔われても全然胸に⼊ってこないんじゃないかっていう議論をして、不安に寄り添うようなキャンペーンをやろうっていうものだったんですよね。

 

——こやまさんのお仕事には⼥性に寄り添うようなコピーが多いと思うのですが、そういったコピーを作る際に気をつけていることはありますか︖

  最近はすごくナーバスじゃないですか。書いた瞬間に、それは⼥性だけじゃないだろうとか、逆に差別ではないかと⾔われたりするので、⼥性のコピーを書くのが難しくなったなと思ってますね。それでも、⾔ってはいけないということと、世の中の気持ちがどうかということはまた少し別の話なので、そこの隙間に届くものにしなければいけないのが苦労しますね。だから、何が炎上したかとかもキャッチアップしていかなければならないと思いますね。

 

 

——こやまさんが早稲⽥⼤学のご出⾝ということで、早⼤⽣時代はどんなことをされていましたか︖

  国際交流活動にすごくハマってましたね。ハマりすぎて留年してしまって、5年⽣になって初めて⼈⽣をちゃんと考えて、⽂章を書く仕事をやろうかなみたいな流れでしたね。

 

——国際交流にハマっていた経験がコピーに活きたと感じたときはありますか︖

  結構繋がった部分もありましたね。学⽣のとき、アジアとかに興味があったから、インドの話とかを調べたりしました。そのときに、インドで花嫁が焼き殺される話を知りました。インドって⼥の⼈がダウリーって⾔う持参⾦を持って結婚するんですよ。男の⼈がお⾦をもらえるっていう⽂化で、ダウリー欲しさに花嫁を焼き殺してもう⼀回結婚する⼈とかいたらしくて。プラン・インターナショナル・ジャパンの仕事が来たときに、この話を知って気持ちがわーって震えたのを思い出して、すごく使命感を感じましたね。やっぱり貧困とか社会に教育が⾏き渡ってないこととかはわりと繋がっている問題だと思うんですよね。国際交流をやってたからコピーが書けたかっていうとわからないですけど、でもそこに興味を持てるかどうかって⼤事なんですよ。全然⾃分が興味を持てないことってコピーも薄くなるので、いろんなことに関して考えたり感動できるかとか、⾃分⾃⾝がちゃんと感受性を持ち続けていられるかっていうのはすごく⼤事な気がしますね。


——コピーライターに成りたての頃はどんな感じでしたか︖

  最初はやっぱり全然認めてもらえないんですよね。特に同じ会社の先輩とかは全然認めてくれない。でも最初、⼩さい会社から⼊ったんですよ。⼩さい会社だとやっぱり⼈⼿が⾜りないから、1年⽬からすぐに⼀⼈で仕事をしていて、自分の書いたコピーがガンガン外に出ていってたんです。そのときに会社では褒められないんだけど、得意先の⼈はたまに褒めてくれました。インタビューしてまとめる仕事とかもあったんですけど、インタビューした相⼿ですごい有名な⽅が「⽂章上⼿いね」って褒めてくれることはあったので、会社の⼈たちを⾒返したいみたいな気持ちが若い頃は強かったですね。2年⽬は宣伝会議っていうコピーライター教室にこっそり通って、⾒返したいって気持ちで頑張ったって感じがありましたね。

 

——今振り返って⾒返せたなって思いますか︖

  私の仕事を⾒てるかわかんないです。でも振り返るといろいろ感謝することが多いですね。当時の会社の先輩には、もうちょっと褒めてくれればいいのにって思うけど、⾔われたことはわりと真実だったなって思うことも多いので。たとえば、学⽣のときは国際交流活動とかやってたからテレビとかあんまり⾒なかったんですよ。全然⾒なかったんだけど、会社の先輩にこの仕事に就いたんだからタレントのことは知ってなきゃダメだよって⾔われて。だから、今でも広告の仕事をやっててテレビ⾒ない⼈がいるんですけど、世の中を⾒てないとダメだなって思います。今の時代は、テレビよりインターネットかもしれないですけどね。

 

——コピーライターになりたい⼈は、普段から何をしておいたら良いですか︖

 ⾔葉の勉強は社会⼈になってからもできるんです。⼈間とか世界のことをどれだけ分かっているのかがやっぱり⼤事なので、学⽣のときにしかできないことをして、⾊々な経験をした⽅が良いと思いますね。

取材の風景
取材中の様子

こやま淳子さんのHPはこちらから!