本と共にある人生
学部:他大
学年:3年
座右の銘:他人の選択肢を制限してはならない
――では、今日語っていただくことを教えてください!
小川洋子さんの『心と響き合う読書案内』(PHP新書 2009年)っていう本です。
この本は、周りから「何かおもしろい本がないか」と質問されたときおすすめしています。
――この本を選んだのには、何か理由がありそうですね?
私は小さい頃からすごく本が好きで、小中高ずっと本を読んだ結果、国語だけ成績が飛び抜けているみたいな、よくいる文学少女でした。
そういう子ども時代を送って、自他ともに認める本好きだと「おもしろい本はないか」とよく聞かれるんですよ。でも、おもしろさの基準は人によって異なるから、安易に薦めることはしたくなくって。何の情報もなしにおすすめの本を聞いてくるのをやめてほしいと、ずっと思っていました……。
そういうときどういう本を薦めればいいのか、色々考えて辿り着いたのがこの本なんですよ。
――簡単に本の内容を紹介していただけますか?
この本は、色んな本の紹介になってるんですね。ジャンルも作者もばらばらだし、52冊も本が紹介されているので、誰でも1冊くらいはおもしろいと感じる本が見つかるだろうと思いました。『枕草子』や『100万回生きた猫』など有名な本だったり、「羅生門」や「檸檬」といった学校の教科書で馴染み深いものも多く入っています。そういった様々な本を、小川洋子さんという作家の方が紹介するという内容になっています。
私がおすすめするよりも、ずっと分かりやすくきれいな文体であらすじもまとめてくださっているので、これを読めばおそらく気に入る本が見つかると思います。ただ、確か今絶版なんですよ。こんなにいい本なのに! 中古だったら買えると思いますし、図書館にもあるかと思います。
――52冊も紹介されていると、読むだけでも大変そうですね。
元々小川さんがラジオで話されていた内容を書き起こした文章なので、読みやすくて、導入にはぴったりなんじゃないかなって思っています。また、しっかりあらすじも載ってるので、以前読んだことがある本の振り返りとして読むのもおすすめです。
――初めて読むもよし、振り返りに読むもよしってことですね。
――他にもおすすめの本の探し方ってありますか?
この本以外でおもしろい本を探すなら、私は本屋大賞の本を読むのをおすすめします。直木賞や芥川賞もいいと思います。芥川賞は、少しもやっとなる話が多いかもしれないですけど(笑)。あと、青空文庫とかはずっと残ってるおもしろい本なので、1冊くらい刺さるものがあるんじゃないかな。
――S.K.さんが個人的に一番好きな本はありますか?
好きというか、人生を変えた本っていうのが何冊かあります。その中でも2冊挙げると、小川洋子さんの『猫を抱いて像と泳ぐ』(文藝春秋 2011年)と、泉鏡花の『高野聖』(1900年)です。
――それぞれの紹介をお願いします!
まず1冊目の『猫を抱いて像と泳ぐ』は、小学校6年生の時に読んでとても衝撃を受けた本になります。おそらくその後の読書人生を全部変えたんじゃないかなってくらいの衝撃でした。
これはとにかくラストが衝撃的で。ネタバレになっちゃうので、読んでほしいとしか言えないです。お話がとても緻密に積み重なった上で最後に繋がるのですが、こういった終わり方をした本はそれまで読んだことがなかったので、強く衝撃を受けました。
もう1冊は、泉鏡花の『高野聖』です。これは私が高校1年生の頃に読んで、大学に入ったらこの作家を研究対象にする、と決めたきっかけになった本です。
このお話は、旅の途中に出会った高野山の高僧、つまりお坊さんですね。そのお坊さんに聞いた不思議なお話集といった感じになっています。
この本の衝撃ポイントは文体です。泉鏡花の文体は「鏡花調」と呼ばれるほど特徴的なんですね。私は基本黙読するのですが、たまたま分からない箇所があって声に出して読んでみたときに、言葉がすごくきれいなことに気が付いてとても驚きました。リズムが本当にきれいなんですよ。なので、 泉鏡花の本を読むときは声に出して読むことをおすすめします。
――他におすすめの本はありますか?
受験生に薦めるのでしたら『モモ』と『星の王子さま』は読んでおくと評論文を解くのに便利だよ、と思いますね。たとえば、時間の話になると『モモ』は絶対出てくるので、一回読んでおくだけで比喩の理解度が全然違うと思います。
――読んだことがない本ばかりで、新鮮でした! またお話を聞かせてください。