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特定非営利活動法人 セカンドチャンス!

実際に少年院に行って子供たちとお話する際に心がけていることはありますか。

心がけているというより自然とそうなるんですけど、少年院にいた頃の自分に教えたいと思うことを伝えているようにしています。少年院出身者は25%が再犯するっていわれてますけど、逆をいえば、75%は社会にいるのに、その人たちの情報が一切ないんです。少年院を区切りにやり直したいと思ってもどうしていいかわからない。

でもセカンドチャンス!で出院者と繋がってわかったのは、看護師してる人もいるし、サラリーマンしてる人もいるし、職人から独立して経営してる人もいる。いろんな仕事してる人がいるって初めて知ったんですよ。これを伝えていかないとって。これを知れば本当に自分がやりたかった仕事がやれるんじゃないかって思うんです。

でもそのためには1つだけ条件があって、「犯罪をやめること」。それさえすればいろんな立ち直る方法があるんだよっていうのを、セカンドチャンス!で出会った人たちの話だったり自分の話だったりを伝えに行っています。

あともう1つ伝えたいことは、独りじゃないということ。少年院出身者の75%は社会にいて、これから少年院を出て地元の仲間と距離を置いても、社会にたくさん仲間がいるんだよっていうことですね。

社会に出て、偏見にさらされることがあるのではないかと想像していたのですが、実際はどうなのでしょうか。

それは結構、自分次第の部分が大きいかなと。たとえば自分は少年院にいたと打ち明けたときに、周りにすごく引かれたりとかしたこともあるんですけど、それってよくよく考えたら「少年院出てるからよ」みたいな悪ぶった感じで言っていて。
結局、人ってその人の今を見てるから。だから、真剣に本心から打ち明けたときに傷ついたことってあんまりないなあと思ってて。(本心で話したときは)「話してくれてありがとう」という風に言われて、「前を向いて頑張ろうとしているんだな」と捉えられることが多くて。

けれど、偏見のことは、少年院にいる子たちもみんなすごい気にしてるんですよ。その子たちには「(周りの人たちは)今の自分を見てるから、やったことは変えられないけど、今次第でイメージは変えることができる」と。

一方で、タイミングもあると思う。出会ったばかりで何の付き合いもなくて「少年院出てるんです」って言ったら、それは怖いよって。たとえば仕事で実績を積み上げてきてっていうタイミングって言うと偏見を持たれづらい。でも、このタイミングがすごく難しくて、そこで失敗することもあります。

社会制度の面で、社会復帰が難しいと感じたことはありますか。

今、だいぶ少年院が変わってきていると思います。自分のときは無かったのですが、今は少年院で高卒認定の試験を受けたりできるので、今の人たちは「家でこもって勉強してました」とか言えるなと思って。
大学だと年齢の幅があるのが一般的ですけど、高校では(周りと年齢が違うと)浮くので、学校行きなおすのは結構きついと思います。

やっぱり「もともと威張って生きてきたのに、みんなよりも遅れてスタートか」という自分のプライドもあって、社会とのギャップと遅れという部分でつまずくことが多い。つまずいてしまって「もうどうでもいいわ」って開き直る形が多いのかなと。

たとえばですけど、少年院を出ていることをずっと言わずにバイトをしていて、ある日、バイト仲間と高校の話をしているときに、自分は高校に行っていないから、なんとなく話を合わせる。でも、それって嘘をついている気がするし、高校の話を自分がしていないことをツッコまれたら困ると思ってしまう。負い目じゃないけど、こんなことを知られたら多分引かれるだろうな、と思って、自分側に壁をつくってることが多いんですよね。「結局俺のこと分かるのは地元の仲間だけで、地元の仲間のところに行ったら少年院を出た人もいっぱいいるし」と。そういう考えで、出戻ってしまって、再犯してしまうというケースがすごい多いのかなって思います。
でも今は、少年院に入っている間に就職を決めたり、そういう風に少年院は今すごく変わっていっていると思います。

社会に向けて伝えたいメッセージはありますか。

社会全体に何かを伝えることは、一番難しいですね。少年院で話すときは別にいいんですけど、一般の人たちもいる中で話すときって自分の中で矛盾を感じることが多いので。

それは少年院にいたときも出た後もそうで、矛盾を感じるからこそドロドロした本音を話せる相手がいなかったんですね。家族とかいろんな人が関わってくれるんですけど、その人たちに、(少年院に入る前に関わっていた)友達と会いたくなるとか、夜に連絡を取りたくなるとか、前みたいに遊びたい、ってもし本音を言ったら、「どれだけ周りを苦しめたと思っているんだ、反省してんのか」ってどこかで思われているんじゃないかと思うと言えないんですよ。結局、真面目ぶって「問題ないです」って言って。それで、自分の中でどんどん孤独感が大きくなって、少年院に入る前のコミュニティしか居場所がない、と感じて戻っていく場合が多いので。

セカンドチャンス!はこれからも等身大というか、本音を話しあえる場としてやっていきたいと思っているので、見守っていただけたらと思います。また、セカンドチャンス!を運営する立場になって少年院にもう一度行ったら、少年院の先生はめちゃくちゃ少年院生のことを考えてくれていると気づいたんですよ。外に行って出会った人と話しても、こんなに考えてくれてる人がいっぱいいるんだということを知って。

でも、当時の自分はそうは思っていなかった。大人は敵だと思っていたし、なにか裏があると思っていたし、上から目線でものを言ってくると思っていたので、敵じゃなくて味方がたくさんいるということを伝えていきたいですね。
これからも当事者主体ですけど、サポーターとか当事者でない方にもオープンな場で出会いを繋げる機会を作っていければと思っています。