1997年千葉県生まれ。2018年に株式会社TeaRoomを創業。幼少期に茶道裏千家に入門し、茶道家としても活動。中川政七商店社外取締役。
——岩本さんは茶道を元に会社を起業されたとのことですが、株式会社TeaRoomはどのような想いや目的をもって設立され、普段はどういった活動をされているのでしょうか。
TeaRoomは「対立のないやさしい世界を目指して」を理念として2018年に創業した会社です。私たちは日本の伝統文化の一つである茶道を軸に立ち上がり、その社会実装の手段として、産業と文化・地域と都市・国と国など、通常では対立もしくは衝突してしまう概念を統合する技術を提供しています。
具体的には、生産ラインの川上から川下への垂直統合に加えて、概念・物語とプロダクトの統合、そしてその先にある体験・顧客基盤を統合していくことによって、理念の体現にチャレンジをしています。工場の承継、企業間取引での国内外へのプロダクト・体験の流通、設計や茶会、研修パッケージの提供など、多岐に渡る事業を展開しています。

——なぜ茶道を元に起業をしようと考えたのですか。
私自身が幼い頃から茶道に取り組んできて、茶道は単なる「お点前の作法」ではなく、政治・経済・建築・美術・食、あらゆるものを一席の中に統合してきた総合芸術であると思っています。また、茶室の中で見てきた調和的な思想と、現実の世界の分断やギャップを感じ、茶の湯の思想を社会実装する必要性を感じました。
結果、起業をすることで伝統文化と呼ばれる茶道を生きたツールにする仕組みの一助になるのではないか、という仮説を持ちました。
——茶道を始めたきっかけと、続けている理由について教えていただきたいです。
始めたきっかけは、子どもの頃に茶道に触れる機会があったことでした。最初は作法を覚えるだけでしたが、続けるうちに、茶室という空間が、年齢も立場も超えて人が対等に向き合える稀有な場所だと気づいていきました。
続けている理由は、茶道が「終わりのない学び」だからです。同じお点前でも、季節や相手やその日の自分の心持ちによって、まったく違う一席になります。幼少期より学び続けていても毎回新しい発見がある。この汲み尽くせない点が、私が茶道を続ける理由です。
——岩本さんが思う茶道の魅力とは何ですか。
自然災害が起きようと、戦争が起きようと、どんな場面も茶室の中は平和そのものの空間が広がっており、いつ何時も帰る場所・立ち返る場所があるというのは日々の中でありがたいことだと思っています。そんな場所が茶室であり、茶道です。
——会社の理念として「産業と文化の分断をなくすことを目的として創業」とおっしゃっていましたが、具体的にどのような分断があるとお考えですか。
本来、産業は文化の上で成り立っている、文化がないところに産業は発生しないという大原則かと思いますが、それが実装されていないことを分断と表現しています。産業側が文化を学び取り込むこと、文化側が産業に貢献をすること。それらを実行すべきだと考えています。
——文化が社会にもたらす影響についてはどのようにお考えですか。
先ほど「産業は文化の上で成り立っている」と申し上げた通り、社会と文化もまた一方通行ではなく、互いを形づくり合う循環の関係にあると考えています。その上で、文化が社会にもたらす最も大きな影響は、人々の価値観や行動様式、つまり「ものごとを判断する物差し」そのものを形づくることだと捉えています。
茶の湯が育んできた、和を尊ぶ・相手を慮る・間を読むといった思想は、茶室の中で完結するものではなく、ビジネスや教育、地域づくりの意思決定にまで持ち込むことができるものです。
立場の異なる者同士が一服の茶を介して対等に向き合えるように、文化には対立を統合し、社会に調和という選択肢を取り戻す力があると信じています。だからこそ私たちは、文化がその力を十分に発揮するために、まず「社会」をつくることから始めているのです。
——産業と文化の相互作用について考えた際、やはり日本の伝統文化に関心をもつ若者の減少が課題となっているように感じました。若者を茶道文化に呼び込む方法として、具体的にどのようなことをされていますか。
茶の湯を、アートや研修、対話の場としてなど、様々な形での接点作りに努めています。それ以上に社会の中での文化関心割合を増やしていくことが大切で、メディアでの発言などもその一つのように感じています。
——お茶とタバコ、お茶と建築などお茶と関連づけたアイデアはどのように発想されているのですか。
特別な発想法があるというより「お茶は本来あらゆるものと地続きだった」という前提から出発しています。茶の湯はもともと、建築(茶室)・庭・書・花・料理・道具・所作・人間関係まで、ジャンルを横断して一つの時間に統合する文化でした。つまりお茶は単体の飲み物ではなく、いろんな領域をつなぐハブのような存在なんです。
たとえば「お茶と建築」は、まさにその象徴で、茶室は、にじり口で頭を下げて入ることで身分を脱がせる装置だったり、限られた広さの中に宇宙を見立てたりと、思想が空間に翻訳された建築です。ベネチア・ビエンナーレというイベントで茶の空間を扱ったときも、私の中では「お茶と建築をくっつけた」のではなく「もともと一体だったものを、現代の文脈で再提示した」という感覚でした。だから何かとお茶を結びつけるときは、無理に組み合わせるのではなく「この領域とお茶は歴史的にどこでつながっていたか」「現代の生活のどの場面にお茶が入り込めるか」を探しています。
——茶道初心者・大学生に向けた一歩踏みだすメッセージをお願いします。
茶道や文化を自分にはわからないものと考えるのではなく、学びを常に行うという視点を忘れないように日々の取り組みを行ってください。

ミニコーナー
・岩本さん一押しの商品やイベントを教えていただきました!
→2026年度 新茶
ヴェネチア・ビエンナーレ2026公式サテライトイベント「Personal Structures」
(情報は2026年6月時点のものです)
・岩本さんおすすめ、またはお気に入りの茶菓子があれば教えてください!
→亀廣保(かめひろやす) 有平糖(ありへいとう)
・岩本さんの早稲田での思い出があれば教えてください!
→毎日永遠にラーメンとつけ麺に染まってました(笑)