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年間700杯を食破! ラーメン官僚・田中一明が語るラーメンの楽しみ方と注目の一杯

ラーメン官僚 田中一明 ラーメン
年間700杯という驚異的なペースでラーメンを食べ歩き、「TRY」の審査員も務める“ラーメン官僚”こと田中一明氏。
数々の名店を観測し続ける氏の舌は、現在のラーメン界をどう捉えているのか。
本記事では、長年の経験から導き出された最高の一杯から、我々早大生が明日すぐにでも行ける大学周辺の注目店、ラーメンをさらに楽しめるポイントまでを徹底取材。
読者にもぜひ知ってほしい、奥深きラーメンの世界をお届けする。
TRY:TRYラーメン大賞(Tokyo Ramen of the Year)の略。
2000年に情報誌『TOKYO☆1週間』(発行:講談社)で始まった「東京で一番旨いラーメン」を決める企画。ラーメンに造詣の深い審査員らが、1年かけて審査対象エリアとなる東京・神奈川・千葉・埼玉のラーメン専門店を食べ歩き、新店と名店に部門を分けて、それぞれ味のジャンル別に投票する。その総合得点をランキング形式で集計し、年一回10月に全国の書店及びネット書店で発売される『TRYラーメン大賞』で結果が発表される。
田中一明 │プロフィール
通称「ラーメン官僚かずあっきぃ」。食べ歩きのペースは年間平均730杯。総実食杯数は22000杯を超える。日本全国のラーメン店の情報に精通し、主な名店はほぼ実食済み。テレビや雑誌、Webなどメディア露出も多く、情報発信の場は多岐にわたる。
ラーメン官僚 田中一朗

――ずっと気になっていたんですが、なぜいつもクマのTシャツを着ているんですか?

ラーメンWalker百麺人時代、「ラーメンWalker TV」というCS番組に出演していたとき、たまたまクマのイラストが描かれたTシャツを着て行ったことがあるんです。友達からこれ、可愛くていいんじゃね? って言われたこともあって、メディアに出るときはクマのイラストの服を着続けてみることにしたんです。すると、いつの間にか私のトレードマークに(笑)。シーズンごとに数パターン発売されるんですけど、そのうちの1、2パターンを購入しています。SUSURU TVに毎月1、2回出演させていただいていますが、毎回同じ柄のTシャツを着てると「え、服替えてないの?」ってなりますよね。だから、最近は特に、何着か新しいものを定期的に買うようにしていますね(笑)。

――ラーメンを1年に700杯食べるとのことですが、多い週は一週間で何杯くらい食べられるのでしょうか?

1年で700杯以上をノルマとしていますので、平均すると1日2杯です。もちろん、仕事が忙しくて1杯も食べられない日もありますが、平日にあまり食べられなかった週は、土日に多めに食べるなどして帳尻を合わせています。あとはゴールデンウィークなどの長期休暇中ですね。まだ全国制覇を果たせていなかった頃は、初めて行く県だと1日12杯食べることもありました。例えば、九州で初日に12杯、翌日山口に移動して9杯、さらに次の日は広島に移動して9杯みたいな週があって、その週は多分通算45杯ぐらい食べたと思います。ただ、これでも、今のトップ爆食系と比べれば、全然甘いですよ。私の後輩で30代のラーメンマニアがいるんですけど、1ヶ月で142杯食べたそうです。

――健康のために意識していることはありますか?


歩くことかな。実は私、運転免許を持っていないんですよ。都内を中心に食べ歩いていた駆け出しの頃、車を運転する必要性を感じなかったんですね。ほぼ電車と徒歩で事足りた。その延長戦上で、今でも基本的には、公共交通機関と徒歩のみでラーメンを食べ歩いています。地方や郊外は、最寄り駅から何キロも離れているラーメン店も星の数ほどある。たとえば駅から3、40分歩いて一軒目を訪問し、次の店にアクセスするために、更に3、40分歩くみたいな。10キロ近く歩くこともままありますが、それもセットでの食べ歩きを楽しんでいます。しかも、歩けばお腹も適度に空くから、ちょうどいいかなって。おかげさまで全国の地理に非常に詳しくなりました。というわけで、特に何か特定のスポーツを嗜んではいません。スポーツをしている時間があれば、その時間をラーメンを食べることに充てたいです。スポーツが大切であることは、よく分かっているんですけど(笑)。

変化する味覚と「うまいラーメン」

──ラーメンを食べ続ける中で、味覚の変化を感じることはありますか?

めちゃくちゃあります。まず、ひたすらラーメンを食べ続けると、未知の味がなくなっていくんですよ。どのジャンルのラーメンを食べても、かつて食べたあの店のラーメンに似ているとか、あの店のラーメンの上位互換、下位互換だなと判別できるようになります。脳内にジャンル別のラーメンの図鑑ができるイメージですね。特に、私はTRYの審査員を務めているので、個人的に苦手な味だからといって、そのラーメンを避けるわけにはいきません。私、実は甲殻類があまり得意ではないんですが、じゃあカニやエビを使ったラーメンは食べなくていいの? っていう話になったら、そんなはずがないんです。こうして食べているうちに、甲殻系のラーメンについても脳内に図鑑ができ、エビラーメンも中々美味しいじゃないか! となってきます。初心者の頃に苦手だったものが、そう感じなくなってくるんです。


意外に思われるかもしれませんが、ラーメンの食べ歩きを始めた頃は家系ラーメンがあまり得意ではなかったんです。当時の私は、まだ舌が鶏油に不慣れだったこともあり、家系に使われる鶏油の風味が苦手だったんですね。


あと、私自身の味覚の変化もありますが、時代の変化もあると思います。今って、ラーメンの種類が驚くほど多いんですよ。正確に調べたわけではありませんが、私が学生だった頃と比べれば、数倍程度にはなっています。そんな中、久々に昔からあったラーメンを食べてみると、想像以上にキラリと光る味だったことを改めて認識させられる機会に多々出会います。かつての自分が本当の価値を理解できなかった1杯が、いくらラーメンの味が多様化しても出てこない唯一無二の味だったということが分かり、「あ、これは昔の自分の舌が未熟だったんだな」みたいな。

──特にそう感じたお店はありますか?

あるある。たとえば、荻窪の「春木家本店」「丸信」「丸福」といった、典型的な古き良き東京の中華そば。また、荏原中延の「中華そば多賀野」や、閉店しましたが、飯田橋にあった「びぜん亭」もそうですね。あとは神保町の「伊峡」や「成光」のような老舗。こういうラーメンは、若かりし頃は、率直に申し上げてそれほど刺さりませんでした。マスコミ研究会の皆さんも、おそらく今の私ほどには刺さらないと思います(笑)。提供されるのは、一見するとごく普通のラーメンなんですが、それを美味いと思えるのは、いろんなラーメンを食べて経験値が上がったからこそだと思うんですよ。提供されるラーメンのビジュアルを観るだけで、どれだけ美味いかが大体予想できるくらいには。こういうラーメンは、昔よりもはるかに美味いと感じるようになりましたね。

最適な食べ方は、店によって違う

――ラーメンを食べる際に決めていることはありますか?

基本的なことから言うと、つけ麺以外は、絶対にスープから先に手を付けています。スープ自体の味を先に把握しないと、麺が絡んだときの味との比較ができませんから。他方、つけ麺は、麺から先に食べることを強く推奨します。しかもひと口目は、麺をスープに浸さずそのままで。最近、特に一都三県では、特に汁なしやつけ麺の文脈で、麺に非常にこだわった店が出てきているんです。阿佐ケ谷の「麦と手」や、さいたま市の「鏑矢」とかね。「麦と手」などは、注文の度に麺帯から麺を切り出しています。なので最初は、完全に混ぜないで麺だけを啜るのがおススメです。長くなりましたが、言いたかったことは、その店が何に重点を置くかによって食べ方を変えるということ。あと、私はチャーシューとメンマは、麺やスープと比較すれば、味の骨格を左右するものではないと思っています。個人的には、なくてもあまり気になりません。だから、最近は素ラーメンとかかけラーメンっていうのがあったら、私はそちらを頼みます。

──なぜですか?

トッピングって結構味に影響するんですよ。たとえば、チャーシューから沁み出す豚のエキスがスープにコクを与え、飲み口が重くなったりとか。つまり、スープ本来の味わいがマスキングされてしまうことがあるんです。これはトッピングの宿命のようなもので、どうしようもない。だから、スープと麺だけでめっちゃ美味しければ、それだけでいいじゃんと思って。多分、私がXに上げているラーメンを見ると、かけが比較的多いんじゃないかな。

──トッピングがあることを計算してスープを作っているお店もあると思いますが、見分け方などはありますか?

まず、どの地域のラーメンなのかによって、判断の前提が全く変わります。たとえば、宮崎県や鹿児島県の実力店でチャーシュー麺を頼まないのは、非常にもったいない。宮崎、鹿児島は畜産王国で、チャーシューが異常に美味い店が多いんです。そういう地域のラーメン店は、チャーシュー麺こそが看板商品ですね。他にも、福島県の「白河ラーメン」や神奈川県の「小田原ラーメン」は、ワンタンが入ってこそ完全体だと言われたりします。「小田原ラーメン」は豚清湯で、トッピングのワンタン、チャーシューが並外れてボリューミーです。「味の大西」とかね。また、麺にこだわるエリアのラーメンは、ワンタンの皮にもこだわるという傾向もあります。そんなエリアでラーメンを食べるに当たっては、基本メニューでなくワンタン麺を注文するのがおススメです。

食べるだけじゃない、ラーメンの楽しみ方

──ラーメンが出来上がるまでなどで、ラーメン屋さんをより楽しむためのポイントはありますか?

観ていて案外面白いのが、丼にどの順番で、何を入れるかですね。カエシ、油、麺、スープ、仕上げの油、トッピングの順番で盛り付けていく店が多いんだけど、麺を入れて、その後にカエシをかけたりとか、順番が全く違う店がたまにあるんですよ。最近は、麺を茹でる工程や、麺を仕上げる工程をチェックするのもおススメ。たとえば、祖師ヶ谷大蔵の人気店「松尾製麦」の麺は、麺を圧力釜で茹でた後に水で締め、それを再度温めて出すんです。麺を圧力鍋で茹でるのも、温麺の麺を一度水で締めるのも珍しい。つけ麺みたいに水で締めると、麺肌が低温で引き締められ、スープに泳がせても麺が溶けにくくなります。あとは、麺の湯切りも面白いです。どれだけ湯切りしているのかを観察してみてください。美味いと言われる店は案外、湯切りの回数を最低限に抑えている場合が多い。湯切りは基本的にパフォーマンスで、やり過ぎても麺肌に傷がつくのでよろしくない。美味い店はちょっと水分を飛ばすくらいなんですよ。こういった部分を見ると、その店がスープ、麺、トッピングのどの要素に力を入れているのかが分かるので、有意義な楽しみ方だと思います。

出汁の進歩が示す、ラーメンの現在地

――ラーメンを食べる上で一番重要視しているものはなんですか?

スープです。より正確に言えば、スープと麺は同程度に重要だけど、2026年現在においては、スープの方がラーメンの善し悪しを決定づけている側面がより強いというのが正しいかも。5年以上前までは「三河屋製麺」「菅野製麺所」といった製麺所の麺を使う店が主流だったんですけど、ここ数年で自家製麺を提供する店が一気に増えました。「麦と手」しかり、八丁堀の「麺や七彩」しかり。そういう店では、私も当然麺の出来映えに注目します。ただやっぱり一都三県全体で見ると、まだそこまで手打ち麺文化や自家製麺文化が一般化しているとも思えない。これから、どんどん自家製麺を作る店は増えるだろうけどね。そうなると、やっぱり現時点で重要視されるのはスープになる。有り体に言えば、今はまだスープの方がギリギリ重要かなといったところです。

――スープがラーメンの味を決定づける割合が大きいとのことですが、スープを一番楽しめるのは、どんなラーメンですか?

淡麗塩と言われる、スープが透き通った塩ラーメンです。客観的に見て、今はこの系統のラーメンが一番平均的なレベルが高い。私個人としても、今一番好んで食べているのは淡麗塩です。ここ10~20年で最も進化したのは、出汁の取り方なんですよ。スープを分解すれば、出汁とタレと油の集合体ということになりますが、その中の出汁の部分が特に進歩しています。私が学生だった1990年代半ば頃は、鶏、豚、煮干し、昆布ぐらいからしか出汁を取らないラーメンが多かった。ところが今は、魚介など様々な素材から出汁を取るようになっています。また、油に香味、タレに貝の旨味を忍ばせたりと、何種類もの素材が重なり合うことで生まれる風味を重んじる文化になっています。そうなったときに、出汁の魅力が最もダイレクトに感じられるのがスープが透き通った塩ラーメンなんです。塩ダレは旨味が淡く、出汁の邪魔をしませんからね。

食べ続けたからこそ生まれた、「時間軸」という視点

――食べたラーメンは全てXに上げられてるんですか?

全て書いています。訪問したお店のコメントをXに上げて整理していて、TRYのような商業媒体に出すコメントのベースにしています。TRYには審査員が80文字くらいで書く一言コメントのようなものがあるんです。これを加工しなくてもある程度は書けるように。だから、単に「めっちゃ美味しかったです」とかは書けないんですよ。結構吟味して書きます。

――コメントを書く際に心がけていることはありますか?

状態じゃなく作用を書くことを心掛けています。書き続けていると必ず、どの店も同じような書きぶりになるように感じ、どうしようかと悩む段階へと突き当たります。家系ラーメンのコメントを何店も書けと言われても、中々難しいでしょう。そこで出てくるのが、作用を書くという意識です。結局、人間って静止画じゃなく、動画としてラーメンを捉えているんだと私は思っています。

スープに関しては、豚骨が出てました。豚骨のこってりとした感じがうまいです。醤油であればビシッと効いていて良かったです。チャーシューもうまかったです。大体こんな感じでみんな書きますよね。それって静止画だと思っていて、本当の人間の感じ方には、最初に鶏が来たな。その後にタレの旨味が来たな。最後に混ざり合ってこうなったな。っていう時間軸があると思うんですよ。要は、時系列に沿った捉え方をするわけです。スープが冷めていくにつれて、貝のコハク酸の風味が立ち上がってくるとかね。そういう作用を書かないとうまく書けないと思ってます。私も何年もやってきて、訓練してこうなってるんですよ。最初は難しいです。ラーメンを食べたときに、リアルタイムで感じたものを的確に分析できなければ書けませんから。できるようになるまでには、やっぱりラーメンを食べてきたっていう経験が必要だったなと思います。

――田中さんのXでよく出てくる定点観測店とはどのようなお店なんですか?

私が定期的に食べて味の変化を経年的に追っていきたいと考えている店のことです。TRYの名店に掲載されている店がまさにそうなんですが、それ以外に、個人的に好きな店もあります。特に好きなのが、門前仲町の「弁慶」とか、蔵前の「元楽」とか。これらは、TRYに掲載されるかどうかとは関係なく、自分が好きだから定期的に通っている店です。

TRY審査員が選ぶ、今うまいラーメン

――おすすめのラーメン店を教えてください。

醤油は、多分材料費が高くなっているからだと思うんですけど、少しレベルが頭打ちになっているのではないかと感じています(笑)。ただその中にも光る店はあって、狛江の「中華そば しば田」や戸塚の「カミカゼ」は、いつ食べても抜群に美味しい。早稲田から近いところだと、大山の「支那ソバ おさだ」がおススメです。

他方、塩は粒が揃っています。江古田の「麺や 金時」と蓮根の「らあめん元」。これらは早稲田からも近いので、ぜひ足を運んでもらいたいですね。あとは、一之江の「ラーメンとうかんや」、行徳の「支那ソバ 小むろ」も、私は大好きです。大塚の「創作麺工房鳴龍」も素晴らしい。「鳴龍」は周年が5月17日で、毎年そこで味を変えます。だから、審査のために訪問するのは、味が変わる周年以降と決めているんですが、今期も良かったです。


味噌も「味噌らーめん屋ちょりん」、江戸川橋の「三ん寅」、船堀の「大島」など、おススメ店は山ほどありますね。神奈川までスコープを広げると、「流星軒」の「流星パンチ」というスパイスが効いたラーメンがあり、これは中々刺激的な味で面白いと思います。


豚骨だと、祐天寺の「博多ラーメン琉」がマイブームで、ここは是非おススメしたいですね。あと、定番ではありますが、赤坂の「博多ラーメン和」も良い。松戸の「博多長浜らーめんもりや」は、都内から少し距離がありますが、万難を排して訪問するに値する名店です。


つけ麺だと、板橋本町の「中華そばなりたや」、上板橋の「魂の中華そば」、要町の「麺舗十六」が好きですね。


家系は、神奈川・上星川の「寿々㐂家」、本厚木の「厚木家」、千葉の五井にある「ラーメン濱野家」がおススメです。東高円寺の「豚骨蒼翔」もいいです。新店なら、深谷の「深谷らーめん藤や」、新川崎の「邪道家」、浅草橋の「麺家笑の道」がおススメです。騙されたと思って行ってみてください。

本厚木「厚木家」

二郎系は、ひと昔前と比べると家系にやや押されがちな感はありますが、最近の新店だと「CRAZY PORK」がおススメです。お茶の水と神保町の間にあります。「ラーメン豚ヒロ」も好きですね。店主が本駒込の「麺屋HERO」出身。場所は埼玉の鶴ヶ島です。あとは熊谷の「オリバーヌードル」や、日暮里・中野・新橋に3店舗を構える「えどもんど」もラーメンの出来映えに定評があります。

──早大生に行ってほしいお店はありますか?

最近できた店だと、「MISO800」。方南町の「創作麺ひとすじ」の2号店で、非常に粘度の高い味噌ラーメンを作ります。箸が立つぐらい粘度が高い味噌で、甘味と酸味と辛味が混じり合っている。どっちかというと、スープじゃなくて食べる液体のようなイメージですね。唯一無二の味噌ラーメンです。

あとは「弐昇早稲田」。多摩から埼玉エリアに「武蔵野うどん」というご当地饂飩があるんですが、それをうまくラーメンに落とし込めていると思います。

あとはさっきも言った「ちょりん」。店主が「味噌っ子ふっく」という荻窪の名店出身なんですけど、「味噌っ子ふっく」の味そのままじゃなくて、スープの濃度を濃くしたり、麺をちょっと太くしたり、独自の工夫を凝らしているんです。「味噌ラーメン」が看板商品ですが「味噌らーめん屋の台湾まぜそば」というメニューがあって、そちらも必食です。昔早稲田に支店があった台湾まぜそばの元祖の「はなび」もそうなんですが、台湾まぜそばのタレは一般的に醤油ベースが多い。ところがこれは、味噌ベースで台湾まぜそばを作っていて面白いと思います。

学習院下「味噌らーめん屋 ちょりん」

杯数は変わらない。変わるのは、ラーメンとの向き合い方

——今後TRYの審査員を引退したら、ラーメンの食べ方は変わると思いますか?

まず、どんなことがあっても1年に700杯食べるっていうのが信条ですね。それは絶対に崩さない。過激派ですけど、年間700杯食べると公言しているのに、600杯でいいのかっていうと、それは許されないと思っていて。杯数を大体で数える風潮もあるのですが、一杯一杯が足で稼いだ一杯だから、ごまかしたくない。ちなみに今年は、今日(6月15日)までで340杯ぐらい。いい数字ですよね。1日に平均2杯食べると考えて、+8杯ぐらいなので。このペースのまま維持したら730杯いくわけだから。なので質問に答えると、杯数を減らすということがまず想像しがたい。60代でラーメンを1年に700杯食べるのも頭おかしいなとか思ったりもするんですが……。

——食べる杯数が変わらないとして、ラーメンの食べ方は変わりますか?

それはすごく変わると思います。ラーメンマニアは、本質的にリピーターかコレクターのどちらかしかいないと思ってるんです。前者は行きつけの店を何軒か決めて、じっくり何度も回るタイプで、後者は新しい店ができたらそれを押さえていく、カード集めみたいな感覚で未食店を攻略していく新店ハンターと呼ばれるタイプ。ラーメン好きって、たぶんそのどちらかの食べ方をすると思うんです。

ラーメン店って、一都三県だと大体1ヶ月で60軒ぐらいオープンするんですよ。チェーン店の2号店などを除けば、厳密には60じゃないんだけど。そうすると、コレクター的な食べ方で新店だけに特化して訪問しても、1年で700杯程度にはなります。


TRYの審査員って異常なことをやっていて、名店を定点観測しているんですよ。名店でも年によって味の上下があるから、公平に評価するためには、毎年食べに行かなければならない。醤油部門だったらこれだけの店に行かなきゃならないとか、大体の相場感はあるんです。TRYの審査員をやめると、その反動で新店ばかりを追うようになるのではないかと思っています。私がTRYの審査員を務めているのは、実力店と言われている店のラーメンをちゃんと定期的に食べたいと思ったからなので、自らが望んだことでもあるんですけどね。TRYの名店リストに載っているような店というのは、一都三県のそれぞれのジャンルにおける、その時代のお手本のような店なんです。そうした店の変化をちゃんと追わずに新店ばっかり行っても、知識が浮ついたものになってしまうんじゃないかなと思って。なのであえて審査員を引き受け、一都三県のラーメンシーンの幹となる名店を毎年訪問し、どんなラーメンが美味しいかという感覚を錆びつかせないようにしています。