

小林一浩さん
メルシー2代目店主。40年間、早大生の胃袋を満たし続けてきた。
若林勇次さん
早稲田実業生時代にメルシーに出会い、小林さん(現店主)をお兄さんと呼び親しむ。逆に小林さんからは、某人気サッカー漫画にちなみ源三さんと呼ばれる。今でも週に一度はメルシーに通っており、2022年からメルシーの通販事業を営んでいる。
【一時閉店について】
――(小林さんに)一時閉店(2024年7月から10月初旬まで)についてお伺いします。閉店の主な要因は何だったのでしょうか?
小林:主な要因は急にパートさんが2人ほぼ同時に辞めたことだね。このままでは店を続けられないから一旦休もうかって話になった。7月いっぱいはとりあえず閉店することにして、8月中旬に店の前と八百屋さん、肉屋さん、米屋さんに貼り紙をしてもらってパートさんの募集をしました。
今働いているうちの1人は、メルシー通販のインスタを見て応募してきてくれました。
【メルシーの後継について】
――後継者は考えていますか。
小林:あまり具体的には考えてなかったんだけど、そういった話もいただくようになって、確かにそうだな、と最近は思っています。
【メルシー通販について】
――では若林さん、メルシー通販を始めたきっかけは?
若林:2020年春のコロナ騒動の頃かな。元々メルシーのラーメンが市販されていれば買いたいなと何度も思っていて。あ、じゃあ作ってしまおうか、と思い立ってお兄さんに相談しました。
2020年に商品開発を始めて、麺は半年ぐらい、スープは1年半ぐらいかかって、箱のデザインとかも含めて結局2年半ぐらいかけて2022年11月1日に売り出しました。スープはメーカーさんが39回作り直してるはず。サンプルAからZまで行って、そこからA’、B’、C’って。M’で今のスープになりました。
――すごいですね。綿密な打ち合わせがあって完成まで至ったと。
若林:全国のメルシーファンの期待を裏切りたくなかったので、納得のいくものを作りたいっていうのはやっぱりありましたよね。完全に同じ物を作ることはできないっていうのは、メーカーさんに言われてたけど。
小林:確かに100%というのはできないね。
若林:昔の味を思い出せるように、出汁はやや強い感じに仕上がってます。デフォルメっていうか。
もう1個言うと、ラーメンのスープってチャーシューが入ると味が変わるんですよ。だからチャーシューが入った状態のスープを再現したくて。
チャーシューがなくてもチャーシューが入った味に近いはずです。
【ラーメンの味について】
――小林さんの代になってから、ラーメンの味を少しずつ変えるなどはしましたか?
小林:それはしていないです。材料が多少変わったくらいですね。源三さんが若いときは、鶏の尻尾の油がいっぱいある部位を使っていた。それが、衛生上良くないということで使えなくなった。だから昔は鶏の油でもっとギトギトしてたんです。
若林:他にも、「昔はもっと煮干し強かったよね」って言われますよね。
小林:今は値段高騰で大きい煮干しが減って、小さいのが多くなっていました。でも最近また大きなのも入るようになってきたので、良い出汁が出るようになってきてるね。
――若林さんの1番お気に入りのメニューはやっぱりラーメンですか。
若林:そうですね。コスパも含めて考えると、昔は「ラー大ゆで半ライス」を頼むことが多かったです。ラーメン大盛りにゆで卵が入って、半ライスがついてくる。メルシーの半ライスって、「半」じゃない(笑)。あれは普通のライスの大きさですよ。
──メルシーのラーメンのどこが好きですか?
若林:とにかく出汁が強いことかな。酢とラー油を入れる人が昔からメルシーでは多いんだけど、それでも出汁が負けないんだよね。出汁が弱いラーメンにいれるとただ酸っぱくなっちゃって。ラーメン好きで全国色んなラーメンを食べてきたけど、ひいき目無しにメルシーは本当に美味しい、そして安い。値上がりしたとはいえ、600円はやはり学生の味方ですね。
――若林さんにとってメルシーとはどのような存在でしょうか?
若林:うーん、「ずっと食べたいラーメン」かな……うちの妻に「最後の晩餐どうする?」って聞いたら、「絶対にメルシー!」って言うんですよ。彼女は、昔連れてきてから熱烈なファンになっちゃって。
通販のラーメンに関しても、スープメーカーの人から「まだ試作するのか」という態度を感じた時は、これ以上は無理かなと心が折れそうになって。でも、完成するまでは死ねないっていう思いでなんとか頼み込みました。メルシーの看板を借りて売り出すにあたって、真剣にやらないといけない、という気持ちで酒も辞めました。
自分にとってのメルシーっていう答えになってないかもしれないですけど、通販で売り出せるようになったし、それをメルシーファンの皆さんに食べてもらえるのが本当に嬉しくて。大きな責任というか、人生の大切な仕事はひとまず果たせたかな、という感じです。
──最後の質問になりますが、小林さんにとってお客さんとはどういう存在でしょうか。
小林:美味しそうに食べてもらえたり、昔のお客さんが来て声をかけてくれたりするとこっちも嬉しくなる。 長い間来てもらえて本当にありがたいです。
──ありがとうございました。