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『惑星のさみだれ』著者・水上悟志の新人時代をインタビュー

“小学2年生で『俺は漫画家になる』と決めていた”
そう語るのは、アニメ「惑星のさみだれ」の原作者である水上悟志先生。
新人時代の苦労や初めての連載作「散人左道」の裏話など、担当編集の須見さんも交えてお聞きしました!

水上 悟志さん
大阪府出身。2002年2月、ヤングキングアワーズ増刊号に読み切り『弥一郎』を掲載しデビュー。同年9月より『散人左道』の連載開始。代表作に『惑星のさみだれ』『スピリットサークル』『プラネット・ウィズ』など。『惑星のさみだれ』は2022年7月よりアニメ放送を開始している

須見 武広さん
月刊ヤングキングアワーズGH編集長代理。大陸書房、角川書店を経て1993年11月、少年画報社に中途入社し、ヤングキング編集部に配属される。現在は月刊ヤングキングアワーズGH(ジーエイチ)編集部に所属。水上悟志の初代担当であり、『散人左道』や『スピリットサークル』の担当編集を務める。

水上悟志が漫画家を目指した理由とは

ー水上先生はどのように漫画家を志したのでしょうか

水上:小学校2年生のときには「俺は漫画家になる!」と決めていました。特に漫画の演出やコマ割りには、昔からこだわりがありました。
アニメを見て「このシーンが漫画ではどんなコマ割りやアングルで表現されるのかな」と考えたり、アニメのフィルムコミックスに対して「このコマ割りは違うだろ!」とツッコミを入れたり。

ー水上先生の強みである演出力は子供の頃からのものだったのですね

水上:そうだと思います。その後も、オリジナルの漫画を描き続けました。小学校から高校まで、だいたい大学ノート40冊分は描いたと思います。

ただ、初めて原稿用紙に漫画を描いたのは高校2年生のときです。作品を出版社へ送ってみましたが、特に返事はありませんでした。そこから「高校卒業後すぐに漫画家になるのは難しそうだ」と判断し、慌てて受験勉強をして大学に進学しました。そして、大学入学後もひたすら漫画を描いていました。

ー水上先生は大学を中退なさったとのことですが、それも漫画が原因でしょうか

水上:多分そう(笑)勉強していませんでしたから。
大学を中退した後は、親に勧められ漫画の専門学校に進みました。親としては「これでダメなら就職しなさい」という気持ちだったと思います。

ー著作である『水上悟志のまんが左道』の中では「社会に出るのが怖かった」とも話されていますね

水上:はい、子供の頃から親や先生から「社会に出たら誰にも助けてもらえない」「甘い考えでは生きていけない」と言われ、脅されてきましたから。それにすっかり怯えて、「社会は怖いものだ」と思っていました。

ー大人になって「社会は怖い」という考えは変わりましたか

水上:いや、今もまだ怖いです(笑)今から組織人になることを想像すると恐ろしい……。

 

水上悟志の新人漫画家時代

-その後、専門学校在学中にアワーズの新人賞を受賞されていますね。受賞したときの心境はいかがでした?

水上:もちろん、嬉しかったです。しかし、「これから沢山描き続けて、連載を取り単行本を出さなくては」と思っていました。あくまでも、目的は漫画を仕事にすることでしたから。

ーここからは、初代担当である須見さんも交えてお話できればと思います。須見さんは、水上先生の作品のどこに惹かれたのでしょうか

須見:一つはキャラクターです。男性読者からの人気に不可欠な「可愛い女性キャラ」が描けていました。また、アングルや構図、コマ割りへの工夫が全ページに渡って感じられました。新人で魚眼の構図に挑戦する姿勢にも驚きました。見どころのある新人でしたよ。

水上:ありがとうございます。実際、構図やスピード感、構成にはこだわっていましたね。

須見:また、背景をしっかり描いていましたね。新人作家だと、背景を描かない人も多いので。ただ、当時は線やパースが荒かったので、丁寧に描くと良いとは言いました。

水上:背景は描きたくて描いているわけじゃないんです……(笑)

須見:今でも描きたくないの?

水上:そうですね。背景なんてほぼアシスタント任せですし、素材も平気で使います。画力は「描き続ければ上手くなるだろう」とは思っていたものの、今でも満足いく絵はなかなか描けません。

ー新人時代、須見さんから漫画のアドバイスはありましたか

須見:原稿を月に16ページ上げるよう提案していました。

水上:月に16ページとは、新人に無茶言いますよ(苦笑い)

須見:でも、水上先生は16ページどころか24ページも描いていましたよね。そもそも、新人に原稿を描けと言っても、描かない人が8割。描ける人でも月に8ページがやっとです。その中で24ページも描ける水上先生は、相当稀有な例でした。

水上:描こうと思ったら描けただけですよ。それに、僕は漫画の専門学校に在籍していたので、授業の課題をそのまま須見さんに提出していましたから。

須見:でも、専門学校の中でも描く量は多かったんでしょ?

水上:はい、課題の提出率は200%を超えていたらしいです(笑)

 

初めての連載作『散人左道』

ー初めての連載である『散人左道』について教えてください

水上:高校時代に『封神演義』にハマって、中国系のストーリーを考えるようになったことがきっかけでした。なかでも「仙人っぽさ」や「術」の設定にこだわり、生まれたのが『散人左道』です。

もともとはツインテールのお嬢様が刀を振り回す話を考えていました。それはそれで絵的に映えていましたが、なんだかんだで没になってしまい……。色々あって、フブキを主人公とした話になりました。

須見:主人公のフブキは、かなり古い付き合いのキャラクターですよね

『散人左道』主人公の主人公・フブキ

水上:大学時代に創作したキャラクターですね。インターネット黎明期、メールや掲示板を通じて、キャラクターを創って育てるのが流行っていました。

実は、『惑星のさみだれ』のヒロインであるさみだれも、このときに作ったキャラクターです。『散人左道』の連載が続いていれば、第2部にさみだれを登場させる予定だったんですよ。

ー『散人左道』の好きなキャラクターや設定はありますか

水上:主人公よりも、イロリとヒバチの子供二人の方が好きですね。なぜか、と聞かれると、うーん……。デザインが上手くいったからかな。

須見:あとは、アクション映えするキャラクターだからかもしれませんね。主役の二人より動きがあって、戦いを面白くしてくれますから。


ヒバチ(左)とイロリ(右)

ーその後、同作は残念ながら打ち切りとなりましたが、当時の心境はどうでしたか

水上:初めて聞いたときは、「やっぱり」と思いました。完成した一巻をパラパラと眺めて、「俺なら買わないかな」と思ったり(笑)

一方で「あの漫画があれだけ売れてるなら俺のも売れるはずだ」と、ひねくれた見方から期待もしていました。それでも、1巻の売れ行きは悪かったようで……。薄々打ち切られるとは思っていましたね。

須見:どの漫画が売れるのか売れないのかは、本当にわからないですからね。

水上:とは言え、打ち切りでもしっかり完結させることは意識しました。少し展開を急いだとしても、中途半端にはしたくなくて。

ー『散人左道』の反省点はありますか?

水上:1巻の内容がダラダラしすぎたなと反省しています。そのため、次作の『惑星のさみだれ』ではスタートダッシュを意識し、1巻で主人公の夕日に関する話は全て完結させました。それでも、周囲からは「スロースターター」と言われてしまっていますね。

水上悟志の初めての連載作品。銀髪黒眉毛の少しうさん臭い仙人「フブキ」は、左道黒月真君の名を継いだばかり。師匠のことづてで霊穴めぐりをしながら精霊や化生等の「隣人」「障り」から人々を助けてゆく。

 

『惑星のさみだれ』アニメ化を受けて

ー2022年7月からアニメ『惑星のさみだれ』が放送スタートしましたね。新人の頃の水上先生が、アニメ化のことを知ったらどう思われるでしょうか

 水上:いやあ、びっくりするでしょうね。「なんとか頑張れば食えるはず」くらいに思っていましたが、思ったより順調に食える漫画家になれたので。 

須見:『惑星のさみだれ』は漫画家・水上悟志の20年で、一番の傑作であり代表作ですからね。アニメ化というのは本当に悲願が叶ったようで、嬉しく思います。

水上:とはいえ、過去の作品なので囚われ過ぎないようにしたいです。自分はあくまで漫画家ですから、現在描いている作品と今後描く作品に腰を据えたいかな、と。

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